夢中

虎牛 竜巳

 空は飛べる。それは何故だか確信がある。試したことがあるのではない。だが人が息をするように、空が青いことと同様に、また泣けば疲れるように、本能として「私は飛べるのだ!」と確信する。

 空にはすでに大空高く飛び上がる影がある。天をつく勢いで、太陽に向かっている。青い空はその影を祝福するように、抱擁している。

 周りには沢山の人がいて、皆興味津々と言った風に、私の翼をしげしげと見る。くすぐったい。

 いざ、青空へ!

 飛び立とうとする私は、足に力を込めた。飛び出さない。

 さぁ、いざ行かん!

 再び私は飛び立たんと、腹筋に力を込める。しかしやはり、私の翼はひくつくばかり。

 何度試しても、私の翼では、あの遥か高き場所を滑空する影のようには飛べなかった。

 恥ずかしい。恥ずかしさのあまり、私はその場に縮こまって、うずくまって、膝抱えて泣き出してしまった。

 そんな私に興味をそがれたのか、周りの人々は、「やはりこんなものか」と口々に文句垂れて、私の翼をひきむしった。

 空は影を隠していた。ここからでは、影はもう見えない。

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夢中 虎牛 竜巳 @toraushitatsumi0613

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