11.【side】あれ、お前たち急に弱くなったか?
「お前たち。これでわかっただろう。無能はわがパーティにはいらない! 気を引き締めていけ!」
エラソー隊長が部下たちにそう言い聞かせる。
「はい、隊長」
部下たちは内心で次は自分がクビになるんじゃないかとビビりながらも、それを隠して返事をする。
「あの、隊長。アルトのやってた仕事は誰が?」
「安心しろ。あの無能のアルトの代わりのポーターはちゃんと雇った。あの無能とは違いちゃんとした冒険者だ」
隊長が新規メンバーのポーターを連れてくる。アルトよりは強そうな見た目をした、ガタイのいい男だった。
それから一行はギルドを出て、ダンジョンへと向かう。
「今日のダンジョンは“黒のラビリンス”。一階層はEランク、二階層はDランクという風に敵のレベルが上がっていく。我々は四階層のボス攻略を目指す!」
エラソー隊長を筆頭にダンジョンを進んでいく一行。
一階層、二階層は順調に突破していく。
そして三階層。
現れたのは、Cランクのリザードマン。
いつもならほぼ瞬殺レベルのモンスターである。
「お前たちいけ!」
隊長は部下にそう命じる。
フロントに立つ魔法剣士がリザードマンに勇ましく斬りかかっていく。
しかし。
「なに!?」
その一撃はいとも簡単にリザードマンによって受け止められてしまう。
エラソー隊長はその事実に驚く。
この二年間(・・・)と言うもの、こんなCランクレベルのモンスターに攻撃を受け止められたことなどなかった。
「クソ!」
さらに立て続けに攻撃を繰り出すが、リザードマンの防御にまったく歯が立たない。
「おい、どうした情けないぞ! お前もクビになりたいのか!?」
そう部下を恫喝する隊長。
「す、すみません!」
「もういい。俺がやる!」
今度は隊長自ら、勇ましくリザードマンに向かっていく。
その攻撃は見事にリザードマンの胴体にヒットする。
しかし、
「削り切れない!?」
いつもなら瞬殺なのに、今回は相手の鎧を斬ることさえできなかった。
「グァァ!」
そしてリザードマンが咆哮し、隊長にその刀を斬りつける。
「うっ!!」
弾き飛ばされる隊長。
体を守っていた結界魔法がそれによって消し飛んだ。
「おい後衛! なんとかしろ!!」
とっさに後衛に命じる隊長。
「“ファイヤーボール”!」
後衛が後方から魔法攻撃を浴びせる。
リザードマン程度であれば、いつもなら簡単に倒せる――はずだった。
「ぜんぜん効いてないぞ!!」
「おかしいな! いつもどおりやってるのに!」
「仕方がない。上級魔法で焼き尽くせ!」
「はいッ! “ファイヤーランス”!」
後衛たちは持っている最高レベルの魔法を放って、リザードマンをようやく倒す。
「……Cランクのリザードマンに俺たちが勝てないなんてありえない。もしかしたらレベルの高い個体だったのかもしれない」
エラソー隊長は首をかしげる。
――本当はアルトが自動で何重にも発動していた強化魔法のおかげで今まで楽に倒せていただけなのだが、それがなくなったから弱くなったのだとは思いもしなかった一行であった。
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