9.【sideギルド】無能は追放だ
アルトが所属しているパーティの隊長であるエラソーは、単身ギルドマスターの部屋へと呼び出された。
「……ギルマス。何か御用で?」
「ああ、エラソー。我がギルドの未来について、大事な話がある」
どうやら重要な話を聞かされると聞いて、自分もようやくここまで上り詰めたかと内心ニヤニヤするエラソー隊長。
かつてエラソー隊長のパーティは平凡なパーティだった。
だがほんの二年前(・・・)から、どんどん成績が上がっていき、気がつけばギルドを代表するパーティに成り上がっていた。
エースパーティをまとめる隊長として、こうしてギルマスから大事な話をされるまでになったのだ。
「我がギルドは今調子が良い。それもお前たちの活躍のおかげだ」
「はい、ありがとうございます」
「しかし、成績が良い時こそ、気を引き締めなければならない」
「その通りでございます、ギルマス」
「そこでだ。これを機にリストラをしようと思う」
「リストラ……ですか!」
「その通り。無能な奴はこのギルドには残れない。そう皆に知らしめるのだ」
「なるほど。すばらしいお考えです。して対象は?」
「各隊長に一人ずつ選ばせろ」
「承知しました」
「これで我がギルドが実力重視のギルドだと内外に知らしめることができ、さらに発展していくことになるだろう」
「素晴らしいお考え……です!!」
「それとエラソー隊長。もうじき騎士学校への編入トライアルが行われるらしいぞ」
「本当ですか! それはまたとない機会です」
「お前が騎士になってくれれば、我がギルドにもメリットがある。全力で応援するから一層修行に励んでくれ」
「はいッ……ギルマス!!」
†
エラソー隊長の中で、誰をリストラするかは既に決まっていた。
パーティのメンバーを集めて宣言する。
「おい、アルト。お前は今日でクビだ」
エラソー隊長の言葉に、アルトを含めて隊員たちは目を丸くした。
「……く、クビですか?」
アルトは困惑して聞き返す。
「無能をリストラせよとのギルドマスターからお達しだ。ポーターとはいえノースキルの分際で、我がSランクパーティに在籍するなどありえん」
「……確かに俺はノースキルですが、最近はスキルのレベルも上がってきて」
「所詮どのスキルも駆け出しレベルだろ! 二年間も冒険者として働いて、駆け出しレベルのままではないか。所詮ノースキルだ」
確かにアルトのスキルのレベルは下級レベルのままだった。
それは事実だったので、アルトは特に言い返すこともできなかった。
「お前みたいな無能がいると全体の士気が下がるのだ。今すぐ出ていけ!」
「……ッ!!」
一方的にクビを言い渡され、アルトは何も言い返せない。
怒りをこらえ、そのまま黙ってその場を後にするしかなかった。
「皆も肝に銘じろよ! 無能は我がパーティにはいらないのだ!」
――と。アルトが立ち去った後。
「た、隊長」
おずおずと下級隊員の一人が歩み寄ってきた。
「どうした」
「アルトさんは他のパーティの雑用も全部こなしていましたし、皆をバフで援護もしていました。本当に辞めさせて良いのですか?」
しかし、部下の言葉を隊長は一蹴する。
「何をバカなことを。雑用くらい誰でもできる。わざわざノースキルを雇う必要はない! ノースキルじゃない人間を雇えば、バフももっと強くなるはずだ!」
隊長にキレられて部下は萎縮する。
「……そ、それは失礼しました……」
「良いかお前たち! 弱いものはこのギルドに居られない! 肝に銘じろ!!」
†
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