3.睡眠修行



「そうだ。バフを使ったらどうなるんだろ……」


 アルトはふとそんなことを考える。


 アルトは魔法回路が一つしかない。

 通常、結界魔法や強化魔法を使う場合、効果が持続している間は回路を占有してしまう。

 すなわち、発動回路が1つしかないアルトは、結界魔法や強化魔法を使った場合、他の魔法を一切使えなくなってしまう。


 しかしオートマジックが自身の魔法回路を使っていないとしたら、もしかしたら何重にも強化魔法をかけられるのではないか。そう考えたのだ。


 アルトはさっそく実験をしてみる。


◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


 <テキスト1>

 マジックバフ

 マジックバフ

 マジックバフ


◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


 そんなテキストを書いて、起動してみる。


【処理を開始します。マジックバフを起動します】


 そんな声とともに、アルトに魔力強化がかかる。

 レベル1の強化魔法なのでステータスの強化はわずかだ。


 しかし――


【続いて、マジックバフを起動します】


 二度目のバフがかけられる。

 アルトにさらに魔力強化がかかる。


「おおっ!!!」


 どうやら、オートマジックでは、自身が持っている回路は一切使わず、スキル自体が代わりに魔法を発動してくれるらしい。


 魔力が続く限り、強化魔法をかけ続けてくれるのだ。


「これ、レベルがあがったら、めちゃくちゃ強くなるな……!!」


 もちろん魔力が必要なので無限に強化し続けることはできないが、重ね掛けできるというのはかなりアドバンテージだ。


「……明日も仕事だし、そろそろ寝ないといけないな」


 気が付くともう深夜を回っていた。

 オートマジックを試したいのはやまやまだが、雑用で日銭を稼がないといけないという現実は変わっていない。


 ……とそんな時、テキストに新たな文字が現れる。


◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


 <テキスト1>

 マジックバフ

 マジックバフ

 マジックバフ


 ※繰り返しを設定する場合は、次の構文を用いてください。

  For 回数

   スキル名

  next

 

◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇



「繰り返しをスキルを使うためにのワードが用意されているのか……」


 アルトはさっそくそれを使ってテキストを書いてみる。


◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


 <テキスト1>

  For 5000

   マジックバフ

  next

 

◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


 試しに5000回と設定してみる。

 

「寝てるときも発動し続けてくれたら便利だな」


 もしこれができるなら、寝ている間にも修行を行うことができるということになる。


「(テキスト1)」


 そう心の中でつぶやくと、テキストに書かれたとおりマジックバフが発動する。


「……これで明日の朝どうなってるか楽しみだな」


 †

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