48
48
ミューリエの瞳を見ていると、なぜか僕の心が苦しくなってくる。理由は分からない。
ただ、彼女はこのままスライムにトドメを刺す選択を望んでいないような気がする。そして僕の意思と彼女の意思が一致していないから、重苦しい空気を感じるのかも。
――うん、今回はスライムを倒すのをやめておこう。
「ミューリエ、やっぱりスライムを助けてあげて。ただ、このままだと先へ進めないから、なんとか追い払ことは出来ないかな? 動きを止めるのでも良いし」
「そうか……。では、スライムは殺さずに進むぞ。ヤツを追い払うのは簡単なことだ」
一瞬、ミューリエの表情が緩んだような気がした。それは嬉しいというよりも安堵したという感じの方が強い印象だったけど。
いずれにしてもミューリエはスライムの方へ向き直り、カッと目を見開いて威圧する。すると彼女の体の内部から突風のようなものが生まれ、それを受けたスライムは即座にどこかへ逃げていってしまう。
……あ、これは僕がシアの城下町で初めてミューリエと出会った時、チンピラたちを弾き飛ばした技と同じものかもしれない。あの時と比べると威力も迫力も格段に弱いけど。有効範囲だってピンポイントだ。
つまりスライムの生命力に合わせて技の強さを抑えているんだろうな。
ということは、自分の意思で技の威力をある程度は制御できるということになるけど、もし最大にまで力を高めたらどうなるのかな……。
「では、アレスよ。先へ進むこととしよう」
「あ、うんっ」
こうして僕たちはスライムを追い払い、洞窟の奥へ進むのを再開した。
→8へ
https://kakuyomu.jp/works/16816927860513437743/episodes/16816927860514095219
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます