第2話 B 墓相

僕の叔父さんが変なものに凝りだした、と連絡があったのはかれこれ5年ほど前のことになる。

何に凝りだしかのかって?「墓相」とかいうものなんだ。なんでも墓には良い墓と悪い墓があって、それぞれ吉相墓、凶相墓というらしい。


凝りだした、だけならいいのだが、叔父さんは自己主張の強い人だった。親戚中の墓を見ては、これは凶相だから建て替えろ、一族が絶えてしまうぞと脅して回っていた。派手好きな親族が建てたガラスの墓を見た日には、烈火のごとくに怒り狂った。


そんな叔父さんも、そろそろ自分の死期を悟ったらしい。今まで培った墓相学の知識を総動員して最高の墓を建てた、と自慢していた。


叔父さんが亡くなったのは墓を作ってから1週間後だった。最高の吉相墓を作ったにしては運が悪いもんだと葬式では散々な言われようだった。


その年。前例のない超大型台風がその地域を襲った。

墓地の被害も甚大だった。供養をしている寺は瓦は飛ぶ、柱は折れる、火はでるの大惨事。墓地もそのあおりを喰らい、墓石は倒れる、卒塔婆は燃えるとこれまた大惨事。これを直すのは大仕事だと頭を抱える人が後を絶たない。


そんな中、叔父さんの墓だけは建っていたんだ。それも、無傷で。すこし土がついたぐらいで、雨に洗われてむしろきれいになったんじゃないかというくらいだ。


墓相はインチキ、って思ってたけど叔父さんの墓は本物だったらしい。あるんだね、こういうの。

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