A to Zの怪異譚

戯 幽

第1話 A 悪夢

「変な夢を見るの」

あかねは話し始めた。。

「夢の中で私は車を運転しているの。あの人の車よ。そして知らない道を通り、知らない森に車を停めるの。なぜか私はパジャマで。靴は履いているんだけどね。それで、そのまま森に入って行くの。そこには…。」

そこで一度息継ぎをする。さも、大事なことを今から話すのだと言うように。

「そこには、あの人がいるの。でも、どう見ても生きていない。首は曲がっているし、何より体中が真っ赤なの。血なのよ。白いシャツに、おヘソのあたりに包丁が刺さってて。服が白いから、余計に赤い血が目立つのね。そこで悲鳴をあげて、目が覚めるのよ。」


こんな話を聞かされた3ヶ月後、あかねは捕まった。夫の浮気が原因で口論となり、刺殺したあとに森に埋めたらしい。凶器は包丁だった。


話を聞いた時は、仲睦まじい二人にこんな結果が待っているとは考えもつかなかった。夢は、このことの予兆だったのだろうか。

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