何故か  ~遡~

 遡ること1時間前——


「——きて……お願い、起きて。」


 僕は、知らない震える声で目を覚ました。



「ここは…どこ…。」


 目を覚ますと、僕は真っ白な部屋で知らない人たちに囲まれて寝ていたようだ。


「あの、これは…」


 僕は身体中に繋がれたコードに気がついた。


 さっきまで泣きながら僕を起こそうとしていた人が、僕が起きたことに気がつくと、急に抱きついてきた。



「あぁ、よかった。あなたまで失ったら…」


 その人は、僕のことを我が子のように抱きしめてくる。


 僕は混乱し、こう質問した——


                ——「あなた、誰ですか?」


 だって、僕の知らない人だから。


「え? 何 言ってるの……私はあなたのお母さんよ。」


 へ、何言ってんだこの人。



 すると、自称母親は突然顔色を変え——


                    ——「お医者様にっ」


 と、言って部屋から飛び出してしまった。





 自称母親が消え、僕が混乱した頭の中の整理をしようとした。


 すると——



      ——「君、いつまで寝てたんだよ。長すぎ」


 知らない女の子が部屋に入ってきた。



「えっと……だれ?」


 と、僕が聞くと——


「私は、君と同じ病院の病人だよ」


 僕が病人?    自慢じゃないが、僕は今まで大きな病気にかかったことがない。


「なんの、病気なの?」


 この子に聞いても分かるはずないかもしれないが、僕は聞いた。




「んーと。今のところ私の推測ではあるが、

 交通事故に合い、になったんだと思うよ。」


「へ、き、記憶喪失?」


「そうだよ。だって、さっきのおばさんも自分のこと君の母親だと言っていたけど、君は分からなかったじゃないか。」


 おぉー。なんだか説得力あるなぁ〜。


 ん?




「ってことは——」


         「——そう、私も記憶喪失なんだ」

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