第2話 1の後悔 vol.2
あらすじ
俺は「ペンダラス」というバーで働いている。今年大学を卒業予定で就職活動がめんどくさくさかったのでペンダラスに就職することになった。
そんな俺にはある超能力がある。それはクレジットカードでお会計を進めるとき、客が暗証番号を入力する際に目線を斜めに向けた瞬間過去へタイムスリップすることができるのだ。
そして今日も俺は、ある過去へ飛ぶことになる。
ここは明らかに2022年ではないことは一目瞭然だ。スマホを触っている人はいないし、服装も妙だ。やたら肩幅がとんでもなく強調されている服を着ている人が多い。そして街中のポスターには「ドラゴンクエストIII発売」の文字。このポスターから推測するにここは1988年だろう。
実はここに飛ばされるのは初めてではない。初めてここに来たのはアルバイトを始めたてのころだ。少しではあるが仕事を覚えてきたタイミングでお会計の業務を教えてもらった。その時マスターは
「クレジットカードでお会計を進める時、お客さんは暗証番号を入力するんだがその時は目線を斜めに外せ。ずっと凝視されていると暗証番号を入力しづらいからな」
と言われた。
常連のおっさんはそのころからお店に来ておりクレジットカードでお会計をするタイミングがあったので、教えられたことを守り目線を斜めに外した瞬間ノイズが走り気づいたらここにいた。初めてここに来たときは焦った。いったい何が起きているのかわからなかった。一時間ほど街を歩いているとここがどこなのかわかってきた。ヒントはおっさんとの会話だ。
「純一君はドラゴンクエストってゲーム知っているかい?」
おっさんはお酒がかなり入っており、若干呂律が回っていなかったがなんとか聞き取れた。
「はい。一応は知ってます。5,7,11は実際に触ったこともありますよ」
俺は淡々と答える。
「おお!そうかそうか。世代を超えて愛されるゲームっていいな。俺もドラゴンクエストシリーズは大好きで全シリーズプレイしているよ」
「それは凄いですね。」
「ただ一つだけ悔いがあってな。1988年に発売されたドラゴンクエスト3に関しては発売日にプレイすることが出来なくてな。学校で友人にネタバレをされてしまったんだ。それで友人と大喧嘩しちまってよ。発売日にもっと早く起きていれば喧嘩することがなかったのにな。人生楽しく生きてきたが唯一の後悔かもな」
「その友人とは仲直りできたんですか?」
特にこの話に興味なかったが、バーテンダーとして会話を続ける仕事をまっとうするため質問してみた。
「仲直りする前に死んじまったよ。交通事故でな。ずっとずっと謝りたかったのに変なプライドが邪魔してたんだ。だから今でも謝らなかったことを後悔してるんだろうな」
少し涙ぐんでおっさんは答える。
「そうだったんですね。失礼なことを聞いてしまいごめんなさい」
「純一君が謝ることはないよ、こんな話聞いてくれてありがとうね」
この会話からドラゴンクエスト3の発売ポスターがあるってことはここは1988年だってことがわかった。しばらく時間が経つとまたノイズが走りバーに戻ってきた。
「なんだったんだ今のは・・・」
これが初めてのタイムスリップだった。2022年に帰ってきた後俺はこの能力について色々考えた。おっさんはバーの常連ということもありこの能力が発動してから何回かお店に来てくれた。しかし、過去へ行ったり行かなかったりした。そこで俺はタイムスリップするための条件があるのではと考えた。その条件は三つ。
1,クレジットカードでお会計をすること
2.カードの末番号が10であること。
3.お客さんの後悔している過去を知っていること。
1つめの条件に関しては現金でお会計を進めるときは100%タイムスリップが起きないからだ。
2つめの条件は、おっさんは2つのクレジットカードを持っており末番号が10のカードでタイムスリップが必ず起き、それ以外のカードでは起きないからだ。
3つめの条件は、実はおっさん以外の人のお会計でも何回か過去へ飛ばされている。仮にこの人のことをAとしておこう。Aのお会計は必ず末番号が10のクレジットカードだったが過去へは飛ばなかった。しかし、Aが後悔している過去の話を聞いた後のお会計でタイムスリップが起きたからだ。
過去といってもどれくらい昔に飛ばされるかはバラバラでAの場合は4年前とおっさんと比較するとかなり最近だ。ここで俺は「お客さんが一番後悔している過去へ飛ばされるのでは」と推測した。ちなみに、タイムスリップしても特に何もせずただひたすら2022年に帰るタイミングを待っている。
「早く戻りてーなー。またおっさんの過去に飛んじまった」
正直この景色は何回も見ているので新鮮味もなくただひたすらにめんどくさかった。
「そもそもなんで俺が過去へ飛ばされているんだ、俺に何をしろと」
街を歩きながら考える。すると
「ドラゴンクエスト3発売します!購入希望の方は並んでください」
おもちゃ屋から発せられるこのセリフに街中はざわついた。我先にと列を作る。
「記念に買ってみるか」
俺はなんとなくこの列に並ぶことにした。ちなみに、過去へタイムスリップすると服装や持ち物はすべてその年代にあったものになる。例えばスマホはポケベルに。服装もやたら派手なものに。お金も旧紙幣になる。
「ファミコン買わねーとな」
俺は今まで過去でなにかすることはなかったので、少しワクワクした。
そしてこの列に並んだことがその後の純一の運命を大きく分けることになる。
10の後悔 @yasaisandesu
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