第3話 すり減っていた心が生き返る、そんな本です。

「禅シンプル生活のすすめ」         枡野俊明(ますのしゅんみょう)著


この本は、お寺のご住職であり、また庭園デザイナーとしても世界的に活躍されておられる枡野さんの著作である。


この本には、仕事や毎日の生活がいきづまった折に、何度も助けられたことがある。


禅のシンプルな生活、「禅的生活」のことが多く語られている。


いくらこの世の中が「生きづらい」と嘆いてみても、世の中は簡単には変わらない。世の中が思い通りにいかないのであれば、いっそ自分を変えてしまおうと言うのが、基本的な考え方である。


生活を変えると言っても難しいことではない。


ちょっと「習慣」を変えるだけ、ちょっと「見方」を変えるだけである。


その禅の力を借りて、人が幸せに生きる知恵を学ぼうというものである。


他人の価値観に振り回されないように、余計な悩みを抱えないように、無駄なものをそぎ落とし、限りなくシンプルに生きる。それが「禅スタイル」である。


シンプルに考える癖をつけると、悩みがすっと消える。シンプルな習慣を身につければ、生きるのはずっとラクになる。そう筆者はいう。


例えば、少し紹介するとこうである。


1. ボーッとする時間をもつ

皆さんは日々の生活の中で、何も考えずにボーッとする時間がありますか。「そんなに暇な時間なんかない」という人がほとんどではないでしょうか。仕事に追われ、時間に追われ、生活に追われる日々。


しかし、1日のうちで、たった10分でもかまいません。何も考えずにボーッする時間をつくってみてください。


周りのものにとらわれることなく、ただボーッとしてみる。

そうすると、移ろいゆく大自然のなかに今、自分が生かされていることに気がつきます。何事にもとらわれない、純粋で素直な自分が顔を出してきます。



2. 脱いだ靴を揃える

心の乱れは足元に表われる。禅には、「脚下照顧」という言葉があります。「きゃっかしょうこ」、その意味は、自分の足元をよく見なさいということ。


自分の足元が見えていない人は、自分自身が見えていない。ひいては、人生の行く先も見えていないということ。こうした小さなことが実は、生き方に大きく影響します。


家に帰ったら、玄関で脱いだ靴をきちんと揃える。食事に行って座敷に上がるときにも靴をすっと揃える。たったこれだけのこと。3秒もあれば十分です。


しかしこうした習慣を身につけることで、不思議と生活すべてがきりっとしたものになります。生き方が美しくなる。人間とはそういうものである。



3. 一杯のコーヒーを丁寧に淹れる

労力を省くのは、人生の楽しみを省くこと。皆さんはコーヒーが飲みたくなったらどうしますか。外にいるなら数百円で淹れたてのコーヒーを買う。あるいは自動販売機を利用する。ごく当たり前の光景です。


でも、ここでちょっと想像してみてください。

まずは自然の中に足を入れて、たきぎを拾ってくる。自分の手で火をおこして湯をわかす。「ああ、今日はいい天気だな」と空を眺めながら、豆を挽く。


そうして淹れたコーヒーの味は、おそらくコーヒーメーカーでつくるよりも数倍おいしい。


それはどうしてかと言えば、一つひとつの行為に「命」が吹き込まれているからです。薪を拾う行為、火をおこす行為、そして豆を挽くという行為。どの行為にも無駄なものはひとつもありません。それが生きているということです。


時間と労力の中にこそ命が宿っている。すなわち時間と労力を省くことは、人生の楽しみを省いているのと同じことです。


なるほどと思う、茶道の心も全く同じではないのだろうか。


こうした文章を読むだけでも、すり減っていた心が生き返るように思う。


想像しただけで、美味しいコーヒーの香りが漂ってくるように思う。ほんのひと時こうした時間を持ち、自分と対話をする。本当に充実した時間を取り戻せるように思うのである。


もっともっと自分を大切にしていきたいと思う。



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