第2話 最近の文芸小説が見失ったものが、ここにはあります。………「蝉しぐれ」

「蝉しぐれ」  藤沢周平著


書きためたものがあるので、少しずつ出そうと思う。

しかし、読み返すと古い話題があり、どうしようかと?と迷ったがここでごめんなさいと謝ってそのまま投稿することにした。


「トレンドでないものがありますが、ごめんなさい。よろしくお願い致します。」


さて本題。


時代小説のことは知らなかったのだけれど、何かのきっかけで藤沢周平さんがサラリーマンだったことを知り、それではと言うことで初めて読んだ。


ちょうどこの文庫本の解説を文芸評論家の秋山駿さんが書いておられた。

彼はこの本を手に取り、思わず少年の日のように徹夜をしてしまったと書いてあった。


文芸評論家としてたくさんの本を読み、およそ作品に対してアラを探すような、批判的な感情抜きには読めなくなった人間に、再び少年の日のような感動を与えてくれたと書いてある。


まさしく、僕も同じような印象を受けて感動したことを覚えている。


山形の自然がとても美しく描かれ、そしてそこに登場する若者三人のドラマが、とても颯爽としていて勇気を与えてくれる。


まさに青春ドラマである。


学問を志すもの、藩の役人となるもの、そして文四郎。


また隣に住む女の子ふくとの初恋物語も、とても美しくて素晴らしい。


彼女は、大きくなって美しい女性となり、お殿様の側室となり子供をもうけることになる。その後、藩の内紛がおき、主人公の文四朗等の若者達が集まって助け出す。

手に汗握る、冒険物語が始まる。


最後に彼女と文四朗が面会する場面で、彼女が発する言葉


「文四郎さんの御子が私の子で、私の子が文四郎さんの御子であるような道はなかったのでしょうか」


えっ、この恋の姿も美しすぎて、さらに感動する。


そして、僕はこの言葉をずっと覚えている。

何年も経って、こんな事を言われたらどうするって。


先の秋山駿さんが書いておられる、最近の文芸小説が見失ったもの。

それは、都市の灰色の壁や人間の裏側ばかりを書いて、純粋で清純なものを軽んずるような風潮、それとは、真逆にあるような清々しいものにすっかり魅せられてしまう。


いい年をしてその昔、韓国ドラマにのめり込んだのも、同じようなことからだったように思う。


「冬のソナタ」には感動した。

セックスシーンも無ければキスシーンも無い。

ドロドロしたものとは無縁の、爽やかな恋愛物語に驚いた。


カミさんは遅々として進まないドラマ進行に呆れていた。


この藤沢周平さんの小説は、時代小説を超えた感動があると思う。



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