第8話 修行の後に
「27…28…29…30。よし終わったぞ。」
腕立て伏せをしている。俺の上に乗っかっているのは幼女…ではなく世界を破滅に導く龍であるゼータだ。
「え?これやる意味あったの?」
俺は、ゼータに聞いてみた。
「いや、分からん。」
ゼータは、答えにならない答えをくれる。
「分からんのかーい。一日目だけど、やる気起きないよ。」
「だって仕方がなかろう、お前の記憶から引っ張ってきたんだから。例えば、強くなりたけばk」
「うるさい。」
ゼータが俺の記憶を、引っ張ってくるのは不愉快で仕方ない。自分だって処理できていないのに。
「なあ、これで強くなんのか?」
クールタイム中の俺はゼータに話しかける。
「まあ、筋骨隆々になる一歩じゃ、」
ゼータはいつもこんなふうに答える。
「そういや…世界を滅ぼしたいんじゃないのか?」
俺は聞いた。
「確かに滅ぼしたい、いや、正確に言うとたかった。だろうな。」
ゼータは、はぐらかす。
「今の世界は居心地がいいのか?」
再度俺は聞く。そして暫くの沈黙の後ゼータは、
「…ああ。我輩が思ってた以上に、な。」
ゼータは、微笑んでいた。
「我輩は、地獄と天国があるとするなら天国の方がいいな。」
ゼータは、こっちを見て笑う。
「なんだよいきなり。」
俺には、ゼータが笑っている意味は分からなかった。
『休憩終わりだぞ〜』
あれから二ヶ月が経った。修行も慣れてきた。が、筋肉は、そこまで強くなった印象はない。
『あ、はぁ〜、…まあ、多分そんなに気にすることでないと思うぞ。』
ゼータは、欠伸しながら話す。最近のゼータは、外界に出ようとしない。まあ、その方が楽でいいのだが。と、白い光が、身体の周りを駆け巡り、互いに押さえ付けて、幼子が、出現した。
「何を言う!我輩そんな奴に育てた覚えないぞ!」
「あっ出てきた。」
最近は、慣れてきた。此奴が出たり入ったりするのが疲れないくらいには、魔力が蓄積されているのだろう。
二ヶ月前から再契約したこの鍛錬場も、見慣れてきた。二ヶ月前は、いやいやだったが団長の為にも、団長…あの感じは、なんなんだろうか。
『おい!余計なことを考えるな!』
前から足が飛んでく
「いって、痛え。」
蹴ってきたのはゼータだ。
『また、考えたな!鍛錬中はミステクのことは考えるな!』
ゼータは低身長の体を精一杯背伸びして語ってくる。
次は拳が右頬に突かれていた。痛みでどうしようないくらい蹲る。
『お前そんなんで騎士に為れると思ってたのか?』
「それは…。」
いつも黙ってしまう。それが悪いところだ。
『だから変えるんだろ!』
ゼータは、喝を入れようとする。だが全ての発言が、俺の芯の傍をすり抜けていく。
全てが刺さるが、俺の傍だけで核心を突こうとしない。
『だってお前は!』
明るいライトがチカチカしている。
「@÷$○=\×いやー、執筆も作曲もしてて凄いですね。」
あるユーザーが俺をメンションして言う。
だが自分が誰なのかそれだけが読めない。本当は執筆も作曲も諦めて、高校に行ってないだけだ。
「そうですね。諦めず、続けることが大事ですよ!」
嘘をついた。クローゼットを除くと杉原と書いてある。本当は、俺…スギハラ?なのか?
『おいっ、起きろ!』
目の前にゼータが居る。
「ああ、すまん。」
『まあ、よい…。だが、次は無駄な事考えるなよ!』
ゼータには、この夢?が見えていないのか?
『何の話だ?』
ゼータは、聞いてくる。
「何でもない。」
そう、答えるしかない。
『隠すな、寂しいだろぉ。』
ゼータは、いつも聞いてくる。だがこの件は、誰にも知られては行けない気がする。
まあ、いいんだよ。
『なんだよぉ!教えろー!』
と言いながら自分の中に入ってくる。
「筆記試験もあるよな?そっちもやらんとダメじゃね。」『…』
俺が聞くと、ゼータ黙り込んでしまった。
『まあ、良い、近くの本屋に行くしかないな。おし、行くぞ!』
ゼータは、俺の手を引っ張る。
「おい、本屋で買うなら、切手交換所に行かないと金が」
俺には今、金がない。トレがくれた小切手から金を引き出さないと、
『それは必要ないぞ。』
ゼータは、微笑んでいた。
「え?」
俺から腑抜けた声が出た。
『我輩、秘策があるんだ。』
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