第9話 騎士と為る為に。

ゼータには秘策があると言われたが、まさか…

『我輩盗んだりしないぞ、ただ、見るだけだ。』

ゼータは、そう言うとトコトコと本屋の『ビシャント・ペーパー』に向かっていく。いつの間に地図を覚えたんだこいつ。

『ん?そんな顔してどうした?』

俺の心が読めていない?のかゼータは。

「なあ、お前俺の心読めないのか?」

俺は話しかけた。

『身体から出ると、どうやら聞こえなくなるみたいだな。』

ゼータは、本を持ちながらそう言う。

「その、本を買うのか?」

俺はゼータに聞いてみた。すると、

書物記録リーバル・メモリエ

ゼータがそう言うと、本が高速で風で捲れて彼の周りに本の文字が、浮かび上がり、螺旋状に広がった。そしてゼータの中に入っていく。

「今のは、」

『今のは、書物を頭に強制的に刻み込む魔法だ』

そう言うとゼータは、俺の身体に戻ってきた。

「それってあれのこと?」

俺は、張り紙を見つけた。そこにはこう書いてある。「立ち読み禁止!それと、魔法で覚えるの禁止!」と。

店の奥を見ると、店主が、鬼の形相でこちらを見ていた。

『逃げるぞ!疾風疾走ゲイル

ゼータは、叫んだ。すると俺の足に魔法陣が張られた。足が風のように、速くなった。

俺たちは店から駆け出した。


「はぁ、はぁ…ここまで来れば大丈夫か、」

日が沈み始めていた。

俺は、過ちを犯した。こいつのせいで、

『は?我輩は、特になんもしてないぞ?』

ゼータは、何もなさそうに言う。

「ニュー様に、なんとおっしゃればいいか?」

俺はニュー様に、なんも言えない…。

『結構前から思ってたんだがニュー?誰だそれ?』

ゼータは、何も知らないのか。またゼータは言う。

『いや、我輩、この国がニューと言うやつを信仰してるのは知ってるんだが、なんでなんだ?』

永明の神であるニュー様は、世界を想像した創造主であり、聖剣ヴィンクスを作った物凄い御方で未だ生きていることを、伝えた。

するとゼータは、姿を現してきた月を見てこう言った。

『我輩は、そいつのおかげでこんないい世界に残れたのか。』

月が写るゼータの目は、潤んでいた。

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