第7話 修行はつまらない?
「なあ、…なんでそんな強いんだ?」
俺は、先程まで戦っていた彼に話しかける。いや、どう見ても彼女な訳だがまあ、男らしい。
「そんなん…生まれつきだ。」
「生まれつき?じゃあ俺は強くなれないのか?」
俺は、守るものがある。ミステク団長ただそれだけ。彼女の今の感じは誰にも見せられない。
「まあ、我輩ぐらい強くなるのは難しいかもしれん。」
冗談を言っているつもりか?
「…が、以前人間が作った本で書いてあった。『努力こそ人を強くする』と、まあ、人間にしては良い文をそいつは書いていたなぁ。」
…なんだ此奴、なんで嫌な顔してるんだ。
「努力は嫌い。」
なんか此奴言ったか?確か努力は…
「努力とか、嫌いなんだよ。」
何を言ってるんだ。
「馬鹿言うな!さっきの言葉を言ったのはなぁ。…言ったのはな!」
俺は、これまでにないゼータの、感情の出し方に驚いた。
「我輩を、唯一倒した、ディミクの言葉だ。」
ディミク…それがこの、ゼータ、いや、暗黒竜ゼターを討伐した唯一の男である。
だが、ユニスには違う誰かの記憶が過ぎる。
…ピーンポーンといつも聞く音がする。毎週金曜日、六時に来る。
「¥〆々×○です。」
また、あの先生だ。一応退学勧告かもしれないから、と思いインターホンには、出た。
「お母さんですか、お父さんですか?」
「…」
僕はいつも無言だ。
「なあ、居るんだろ。杉原。」
「はっ…」
久しぶりだった。苗字で呼ばれるのは。あの人くらいだった苗字で呼んでくれたのは。
「そろそろ顔くらい見せてくれよ。」
「…」
嫌だ、外は暗くてネットよりもゴミクズの集まりだ。嫌だ。
「まあ、いつまでも逃げれると思ってんならそれでもいいんじゃないか?」
「…」
そんなもの、逃げてる訳じゃない。ただ嫌いなんだ。
「まだ、引きずってんのは分かる。だが、植物状態の彼女を、待っているといつか後悔するぞ。」
「ちっ…。」
舌打ちをして自分の部屋に戻ろうとした時。
「救ってやりたいなら、少なくとも『努力こそ人を強くする』ってとこだ。」
努力?そんなことしても彼女が絶対に助かるとは言えない。
そんなこと…しても無駄なだけだ。
課題を、ポストに入れておくとか言ってたが、部屋に戻った。
「おーい、どうした?」
そこにはゼータがいた。
「いや、なんでもねぇ。」
俺は何事も無かった返す。
「とりあえず今日は、宿に行くか。」
「ああ、我輩お腹減ったぞ。」
「お、そうだな。」
ユニスとゼータは、歩いていく。
この街の裏で大量殺戮が起こっているとも知らずに。
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