第6話 再会

「ユニス・ワルードです。」

俺は、しどろもどろに言った。

「その声…杉原くん!杉原くんなの?」

「スギハラ?なんですかそれ。」

ミステク団長が口にしたのは、謎の単語だった。

「顔も外国人だし、身長も高いし、でも声は、杉原君なんだよなぁ。」

「しっかりしてください!俺は王国騎士団の見習いで、ユ!ニ!ス!・ワルードです!」

団長は、可笑しくなってしまったのか?

でもスギハラ…か、なんかで聞き覚えがある。

俺は、椅子に腰かけた。

「そっかー…違うのかー。」

彼女は落ち込んでいるのか安堵しているのか分からない表情をした。

するんだ。いや、俺は知らなかった。ただ、近くにいなかった。それだけだ。

「ユニス君?の手暖かいね。」

気がつくと俺は団長の手を握っていた。

「あっ、すいません。」

俺は顔が今、熱い。というか部屋が暑い気がする。

「で、団長。お身体は?」

「ああ、この世界のことよく分からないんだけど、あと団長はやめて。そういう立場は私柄じゃないから。」

彼女は、後ろを振り向く。

「そう…ミステクって呼んでよ。」

「無理です無理です。…貴方のような方をそんな呼び捨てなど、怒られてしまいます。」

何を言っているんだ団長は、…そんなことが許されるのか?聖剣を、握った甲斐があったなぁ。

「あの…そろそろ面会は終了なんですけど。」

看護師が言った。

「ああ、すいません。では失礼します。…ミステク。」

「はい、お元気で。」

手を振る彼女は、とても美しかった。

ミステクとか言っちゃった。…恥ずかしい。

でも、いつもの彼女では、全く無かった。

いつもの彼女は、この落ちこぼれの俺も必死になって育ててくれる。そんな厳しい人だった。

「…いつも、家ではそうなのか?」

分からない。自分には、少なくとも別人のように思えた。誰だ、スギハラ?どこの地域だ。鬼人族オーガは、そんな名前をしていた気がする。でも、なんでだ?

そう思いながらも俺は王立魔法医術研究所バグバーンを後にした。


街はすっかり黄昏時になっていた。

そろそろ…宿かなんかに、泊まる手配をしなきゃな。

右が騒がしいなぁ。明かりが着き始めているのが見える。そして薄暗い裏道が見えた。

こっちの路地の方が宿街に、近そうだ。


やっぱり暗いな。この道は、良く見えないなぁ。

歩いていると何かに肩がぶつかった。

「おい…ぶつかってんじゃねぇぞぉ!!」

後ろから大きな声がした。次に肩を掴んできた。

「おい…金置いてけ。」

これは、もしやカツアゲ的な奴か。もしかしたら殺される…。

暗闇の中に光るナイフが見えた。

「…やばい。」

「おい早く置いてけよぉ。」

まずいまずい、この状況は。

とりあえず財布、さい、あ、ヤバイ。王立魔法医術研究所バグバーンに置いてきた。

「おい、ないとか言わねえよなぁ。」

まずい、待て待て

「おいおい、出せよ!」

男はナイフを、こっちに突きつけて、

「うひゃ!」

ナイフを避けたが、有象無象マーセズ・ウイングが切れていた。

「あれ?あれ?あれあれ?もしかして、あの聖剣に選ばれたとかいう馬鹿かなぁ?」

まずい、切られたから見えるのか。

どうすれば、

「おぅっ、ら!!」

腹を蹴られた。痛てぇ。

ユニスは、吹っ飛ぶ。騎士見習いとはいえ、力はあるだろと思うかもしれないが、かれは、強くなりたいから入った。…つまり弱かったのだ。

「…って。」

痛い。このままじゃ刺されて死ぬ。これじゃダメだ。死んじゃダメだ。今消えたら、…

「こんなことで負けるんじゃない!」

声が聞こえた。

する右顔を何かが通り抜けた。

「ぐはぁ!」

男を飛び蹴りしていたのは、ちっちゃくなったゼータだった。

「はぁ、…はぁ、お前弱すぎだ。我輩は恥ずかしいぞ。」

ゼータは男の顔を、踏みつけていた。

「こんな奴にやられるなよ。我輩の同胞よ。」

「あ、…ああ、ごめん。」

夕日の逆光で顔は、見えなかったがゼータの声は笑っていたような気がした。

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