#26
ドミノがそういうとレオパードは不機嫌そうだった表情を真剣なものへと変え、行動を開始した。
背負っていた分厚く大きな大剣の位置を確認と、渡された爆弾を握りしめて略奪者の集団の中へと飛び込んでいく。
「オラッ! これでも喰らえ!」
突然現れた金髪の少女に浮足立つ略奪者たちは、飲んでいた酒瓶を放り捨てて武器を手に取った。
だが、彼らが動く前にレオパードは焚き火に爆弾を放り込む。
ドミノが使用している爆弾は、火薬だけでは爆発力に乏しいため、爆音で相手を委縮させたり、未知の新規な攻撃で狼狽させるなど、デモンストレーションとしての域を越えない。
それでも敵の注意を引きつけるのは十分だ。
暗い夜に閃光と爆発音が鳴り響き、ドミノもレオパードに続いてテントを爆発させる。
大混乱へと陥った敵陣の中で、ドミノはテントの側で静かに眠っている大型の魔獣へと銃口を向けて発砲。
その大きな身体――腹部に穴を開け、苦しそうに叫んだ魔獣を見て一目散にその場から立ち去る。
「こっちは成功。そっちはどう?」
それから合流したレオパードと共に村へと張りしながら、彼女がドミノに訊ねた。
弾丸はたしかに大型の魔獣に喰らわせたが、ドミノは仕留められなかったことを伝える。
「ダメだった」
「ダメだったって、前は倒せたのにッ!? なんでよ!?」
「ともかく作戦は成功だ。村まで走るぞ」
ドミノの返事に声を荒げたレオパードだったが、二人は後ろから追いかけて来る略奪者の集団をおいて村の中へと逃げ込む。
村の周囲には柵があり、シスルは二人が柵の中へと入ったことを確認すると、村人たちに向かって指示を出す。
「来るぞ! 魔獣のほうはドミノとレオパードが相手する! 皆は柵を越えようとする連中に備えるんだ!」
シスルの声に、村人たちが息を飲んで木の槍を構える。
ドミノは拳銃に火薬を込め、レオパードが背中から剣を抜く。
そして、彼女たちを追いかけてきた略奪者たちが村へと到着。
その先頭には、先ほど弾丸を喰らわせた大型の魔獣の姿があった。
たいまつに照らされたその大きな犬のような四つ足で、その場で吠えて威嚇してくる。
「ありゃりゃ、ピンピンしてるね。どうなってんだよ? 前は銃で殺せたのに?」
「ゴチャゴチャ言うな。作戦通りにはいっているんだ。当てにしてるぞ、レオパード」
ドミノがそういった瞬間に、略奪者の集団と大型の魔獣が柵へと向かってきた。
大型の魔獣がその黒い巨体を柵にぶつけて破壊しようとしている。
所詮は即席で作った柵だ。
あまり長くは持ちそうにない。
略奪者たちの歓声が聞こえてくる。
連中は無駄な足掻きだと言いたいのだろう。
武器を掲げ、魔獣に続いて意気込んで柵に攻撃を仕掛けていた。
ついに柵は破壊され、先陣を切って大型の魔獣が中へと飛び込んできた。
だが、これもシスルの作戦のうち。
大型の魔獣は柵を破壊して中に入ってきたが、あらかじめ仕掛けていた落とし穴に引っかかる。
「よし、行くぞ」
「オッケー!」
そして、落とし穴に足を取られた大型の魔獣へと、ドミノとレオパードが襲い掛かった。
レオパードの大剣が大型の魔獣の身体に突き刺さる。
苦しそうに呻くが魔獣は頭を振って彼女を吹き飛ばし、柵に叩きつけられた彼女を喰らおうと身を乗り出した。
そうはさせまいとドミノが魔獣の頭上へと飛び乗り、両腕に付けたガントレットで殴りつける。
それでも魔獣は怯まない。
頭に乗ったドミノを振り落とそうと藻掻きながら、自分の顔を地面に叩きつけ始めた。
「ドミノッ!?」
「こっちの心配はするな! お前は早く態勢を立て直せ!」
だが何度も地面に叩きつけられ、ついにドミノも振り落とされた。
藻掻き続けていた大型の魔獣は落とし穴から足を出し、穴から出ようと暴れている。
このままでは不味い。
村人たちが、柵を越えて入ってきた略奪者の集団を相手にしている状態で魔獣まで暴れ始めたら、あっという間に形勢が逆転してしまう。
ドミノはホイールロック式の拳銃を構え、魔獣の顔面へと銃口を向けたが、暴れ続けているため狙いが定まらない。
「少しでも動きが止められれば……」
「それはアタシがやる!」
レオパードが再び魔獣へと向かっていく。
分厚く大きな大剣がその黒い巨体へ突き刺さった。
しかし、たしかに彼女の大剣はその固い皮膚を貫くが、魔獣の動きは止まらない。
叫びながらさらに藻掻くだけだ。
そして、ついに魔獣は落とし穴から出てレオパードへと襲い掛かった。
魔獣の前足についた鋭い爪が、彼女の身体を切り裂こうと向かって来る。
「レオパードッ!」
「アンタは来るな! アタシのことよりもしっかりこいつに狙いを定めろって!」
レオパードは大剣を盾にして魔獣の爪を防いでいるが、いつまでも受け続けられるはずもない。
焦るドミノはなんとか狙いをつけようとするが、巨体のわりに素早く動く魔獣を捉えることができずにいた。
銃弾を腹に喰らい、さらにレオパードの剣で斬られても動きの鈍らない大型の魔獣。
やはり以前に倒せたのは奇跡だったのかと、ドミノが顔をしかめていると――。
「なんだあれはッ!?」
突然炎が魔獣のへと襲い掛かった。
その炎はまるで風車のごとく回っており、よく見ればそれは、上下に火を纏った
回しているのはシスルだ。
シスルは六尺棒を振り回すと、輪のようになった炎を魔獣の顔面へと放つ。
顔を炎で焼かれた魔獣は激しく動いてはいるが、攻撃の手が緩む。
レオパードはこの隙をついて飛び上がり、両手に握っていた大剣を魔獣の脳天から突き刺して地面に叩きつける。
「今だよドミノ!」
魔獣の頭が剣と共に地面に固定され、レオパードの声を聞いたドミノは向けていた銃口から弾丸を発射。
それが見事に脳天を貫き、魔獣はグッタリとその場に倒れて完全に動かなくなった。
「二人とも離れろ! こいつでダメ押しだ!」
それを見たドミノはいきなり駆け出し、倒れた魔獣の口へと火薬の詰まった袋を放り込む。
ドミノの叫び声を聞き、レオパードとシスルが魔獣から離れ、彼女もその場で転がってガントレットを構えて身を守る。
口の中に投げ込まれた大量の火薬が、先ほどシスルが放った炎に引火し、魔獣の頭は吹き飛ばした。
その爆発で魔獣が倒されたことを見た略奪者たちは、我先にとその場から走り去っていく。
村人たちは逃げていく略奪者の集団を眺めながら、全員で大歓声をあげていた。
皆が手に持っていた武器を夜空へと掲げ、中には涙を流すほど喜んでいる者もいる。
そんな光景を見ていたドミノとレオパードに、シスルが声をかける。
「作戦通りいったな。皆も大喜びだ」
「いや、てゆーかなんでアンタ炎なんて出せるわけ!? もしかして魔法!? アンタも魔法が使えるのッ!?」
傷の痛みも忘れて喚き出すレオパードを見たドミノは、そんなことよりも早く横になりたいと、その場にあった岩に腰を下ろすのだった。
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