年賀状のやり取りをしよう!

「田中、お前の年賀状、昨日届いたぞ。松の内も過ぎたっていうのに、いつ投函したんだよ」

「昨日? マジでか山川、俺ちゃんと十二月二十五日までに出したのにぃ」

「そうなのか、じゃあ配達トラブルかな。それにしても遅すぎると思うんだが」

「一昨日ちゃんと、ポストの前で『十二月二十五日へ! タ~イムスリップ!』って叫びながら大ジャンプして、それから投函したのにぃ」

「お前はどうして、その一連の不審な行動だけでタイムスリップに成功したと思い込めるんだ? そしてそれからどうやって現在に帰ってきたんだ」

「『一月十一日へ! タ~イムスリップ!』」

「ああそう。お帰り、現在へ」

「おう、ただいま!」

「しかし、遅かった分か、ずいぶんと凝った年賀状を作ったもんだな。あれ、全部手描きだろ? 卯年の題材に古事記を採用するとは、お前にしては意外だった」

「コジキ?」

「知らないで描いたのか? あの、海の上を跳ねるウサギの絵って、因幡の白兎だろ?」

「『ウサギは考えました。どうして僕たちは一羽二羽と数えられるんだろう? そうか、僕らはきっと鳥の仲間なんだ。だからきっと空も飛べるに違いない! ウサギは長い両耳を羽のように大きく羽ばたかせ、高い崖の上から身を踊らせましたが、そのまま、青く光る海へと真っ逆さま』――」

「なんだそれ、お前の創作!? なんで新年早々ウサギの飛び降り自殺を見せつけられなきゃならないんだ!?」

「いや、ウサギはその後、通りすがりのサメに助けられ、そのまま一羽と一尾で大海原を巡る冒険の旅へと出発するけど?」

「なんでまた、古事記と微妙にリンクするんだよ」

「話の続きは、弥富と仲楯に宛てた年賀状にて!」

「誰の年賀状で完結するんだよ、それ。変に気になるだろうが」

「ちなみに来年の年賀状では、勇者となったウサギが伝説のドラゴンを打ち倒し、さらに翌年には大賢蛇に予言を授けられて、翌々年には空に住まう天馬を探しに」

「十二年がかりの冒険譚か」

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