クリスマスに夢を膨らませよう!
「♪あばれんぼうの~サンタクロ~ス~、借金返せ~と~やってきた~! チャイムがリンリンリン! 玄関ドンドンドン! (セリフ:いるのは分かってるんだぞ、出てこいやぁ!) まっくろくろけのグラサ~ン!」
「歌詞が途中で一番から二番にすり替わったな。替え歌としての完成度に欠ける。四十五点」
「ちょ、山川、そういう評価あり? つっこむならせめて、『クリスマスにエグい替え歌歌うなよ』とかだろ!」
「クリスマスにエグい替え歌歌うなよ」
「そのまま言うなぁぁぁっ! 山川、最近つっこみサボり気味だぞ!」
「お前の専属つっこみになった覚えはない。ところで田中、さっきから気になってたんだが、お前が抱えてるのって……」
「お、よくぞ気付いてくれたな! 見ての通りの、サンタクロース変身セット~!」
「どこかのクリスマス会でサンタの仮装でもするのか? グラサンかけて」
「さっきの歌詞はちょっとしたお茶目心ですぅ~。この衣装、古着の廃品回収を手伝ってて見つけたんだよ。まだ綺麗だし、十分使えそうだろ」
「確かに。で、何に使うんだ?」
「決まってるだろ、サンタの格好で子どもたちにクリスマスプレゼントを配るんだよ! 前からやってみたかったんだよなぁ、子どもの夢を守るお手伝い!」
「へぇ。田中にしてはまともな発案だが、プレゼント代はどこから捻出するんだ? それと、どこの子どもに配るつもりなんだよ。初対面の子どもに突然不審物を押しつけたら、かなりの確率で防犯ブザーをけたたましく鳴らされるぞ」
「すぐにそういう現実的な発言をするから、山川はネバーランドに行けないんだよ」
「お前は行けたのか」
「いや、逃げ出した影と一緒になってピーターパンをからかったせいで、連れていってもらえなかった……って話はどうでもよくて」
「おい、どうでもよくないぞ、気になるだろうが」
「まず、子どもっていうのは恭輔と翔悟のことな」
「弟かよ。中学二年生だぞ? 夢を守るも何も、さすがにサンタは信じてないだろ」
「俺だって防犯ブザーは鳴らされたくないからさぁ、身近なところで妥協しようかなと。で、プレゼント代の話だけど、中坊二人が欲しがりそうな物を買うような金が、万年金欠の俺にあるはずがない。そんなわけで、山川よ」
「なんだよ?」
「頼む、俺に協力して一肌脱いでくれ! 二人のためにクリスマスケーキを焼いてほしいんだよ!」
「ケーキ? 俺が?」
「山川の手作り菓子、すっげぇ美味いからさぁ。恭輔も翔悟も絶対に喜ぶぞ!」
「何を言い出すかと思えば、なんだ、怖いくらいまともだな。分かった、それくらいなら協力してやるよ。材料費は折半で、作るのはお前も手伝えよ」
「やったぜ、さすがは山川! 俺の大親友の大魔王様!」
「早々に前言撤回したくなってきた。それで、サンタの格好でケーキを渡すのがお前の主目的なんだよな?」
「うん、そう。だから山川、はいコレ」
「はいコレ、って……待て、なんで俺に託すんだよ。仮装はお前がやるんだろ」
「いや、だって、サンタだけじゃ駄目だろ。俺の衣装はこっち」
「トナカイ!? それも拾ったのか、一体誰が着てたんだよ」
「俺の我が儘に付き合ってもらっておきながら、お前をムチでしばき倒すわけにはいかないもんなぁ。だから俺がしばき倒される側。はい、こっちもよろしくな、サンタ様!」
「サンタとトナカイの名誉毀損になりそうな表現は止めろ……っていうか、そのムチどこから持ってきた?」
「♪あばれんぼうの~サンタクロ~ス~、ムチ唸らせな~がら~やってきた~!」
「俺が言うのもなんだが、子どもの夢を壊すな!」
※本日の替え歌元:「あわてんぼうのサンタクロース」吉岡治 作詞/小林亜星 作曲
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