筆入れの中を漁ってみよう!

「なぁ田中、仲楯がどこにいるか知らないか?」

「よ、山川。仲楯だったら、部活のミーティングに行ってるぞ」

「そうか、仲楯なら持ってるかと思ったんだけど。仕方ない、諦めるか」

「何? 何か借りようとしてたのか?」

「コンパス。中学までは筆入れに常備してたけど、高校に入ってから使う機会が無かったからな」

「♪ちゃららららら~、ちゃららららちゃ~ららぁ~」

「ん? 『オリーブの首飾り』? もしかしてお前、持ってるのか」

「♪ちゃらららら、ら~らら~らら~らら~らら~ららぁ~! じゃっじゃじゃーん、コンパス~!」

「……自慢げに出してきたところ悪いんだけどな、田中。コンパス違いだ」

「あれぇ?」

「俺が探してるのは円規、いわゆる『ぶんまわし』だよ。お前のは羅針盤」

「なんだよ、先に言ってくれよ! BGM付きで思わせぶりに取り出しちゃったよ、恥ずかしっ!」

「まさか筆入れから羅針盤が出てくるとは思いもしなかったからな。なんで入ってるんだよ、そんなもん」

「己が歩む先を見失わないようにするため」

「己が歩いたあとに道を作ってみせろ。というか、お前の筆入れの中、他にも変なものが見えた気がするんだが」

「♪ちゃららららら~! じゃっじゃじゃーん、笛を吹くとピューってなって、丸まった紙がベベベベベ~ってなるやつ~!」

「なんで筆入れから『吹き戻し』が出てくるんだよ」

「なんでそんなマニアックな正式名称を知ってるんだよ、山川」

「それで、あとは? どうせ他にもあるんだろ」

「じゃっじゃじゃーん、バトルえんぴつ~!」

「また懐かしい物を。もはやプレミアものじゃないか?」

「じゃっじゃじゃーん、『山川君に渡して♡』って押し付けられたラブレタ~!」

「しつこいぞ、そのネタ」

「じゃっじゃじゃーん、糊とハサミとクーピーと油粘土と……」

「幼稚園児のお道具箱か……いやそれより、四次元筆入れか、それ?」




※本日のBGM:「オリーブの首飾り」ポール・モーリア(原曲アレンジ)

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