風邪は人にうつさないよう十分注意しよう!

「あー、ようやく喉も治ってきたな。よう田中、おはよう」

「……!」

「どうした、酸欠の魚みたいな真似して……って、まさか」

「……」

「今度はお前が、声が出なくなったのか?」

「……!」

「何? 『お前の所為だ』? いや、俺の風邪がうつったなら心苦しくないこともないが、代弁するだとか言って、しつこく付きまとってきたお前にも非はあるだろうが」

「……!」

「『風邪をうつした責任を取って慰謝料払え』だと? なんだよ、慰謝料って。のど飴でもやればいいのか?」

「……!」

「『そんなもので俺が譲歩すると思ってるのか、今日の宿題丸写しと手作りクッキーで勘弁してやる』? クッキーはまだしも、宿題は自分でやれ」

「……?」

「『なんで俺が言ってることが分かるんだ』って? お前の思考なんか顔に全部出てるんだよ。それにしても、お前が風邪とはな。馬鹿のくせにおこがましい」

「はぁ? なんだとコラ山川、もう一度言ってみ――あっ……!」

「あ?」

「……」

「……おい、田中」

「……」

「今日の数学、自習になったから校庭でサッカーやるってさ」

「え、マジで? やーったやった、サッカー、サッカー! 蹴るぜ走るぜ暴れるぜ~……」

「……」

「……謀ったな、山川」

「で、どういうつもりだ?」

「山川のせいで風邪をひいたってことにして、クッキーと宿題を手に入れようと?」

「『お前が風邪をひいた』って設定からすでに作戦ミスなんだよ」

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