風邪には十分注意しよう!

「♪コッコケコッコー、おーはよーうさ~ん! うーす、山川!」

「……」

「お? どうしたんだよ、口パクパクさせちゃって。エサを求める雛鳥か金魚の真似?」

「……」

「なんだなんだ、何してんの、それ? ……あ、ジェスチャーか? ええと、『吐いたら匂う』? おいおい、朝から汚いな、山川らしくもない」

「! ……!」

「違うの? ……あー、『声が出ない』か! なんだよ山川、風邪ひいたのか? ……そうか、風邪かぁ。最近寒いもんなぁ。声、全く出ねぇの?」

「……」

「『全然』か。治るまでずっとジェスチャーで過ごすつもりなのか?」

「……」

「は? 『雑煮は舞う』? ……はっはあ、『どうにかなる』か。そんなに睨むなよぉ、口パクじゃ分かんねぇんだもん。そんな調子で、授業中に当てられたらどうする気だよ」

「……」

「えーと、机に向かって何か書いてる? つまり『当てられても無視する』か。酷いな山川、いつも真面目なお前がそんなことしたら先生が狼狽えちゃうぞ」

「……」

「あ、ハイ、違いますね、察しが悪くてどうも済みませんね。筆談するってことか。ああもう、分かりにくいなぁ。今すぐテレパシー習得してくれよ、山川。俺がビビっとキャッチして颯爽と代弁してやるからさぁ」

「……!」

「おお、出ました裏手ツッコミ。『できるか!』ってヤツだな。仕方ない、しばらくは大親友のこの俺が、お前のジェスチャーを逐一解読してやるしかなさそうだな。ちょっと練習するから、試しに何かやってみてくれよ」

「……」

「『パタパタ。暑~い』……そんな顔するなって、山川。『解読なんてしなくていい』ってこと? まぁそう言わずに、もう一回!」

「……」

「……ほほう? 『田中って最高にいいやつだな、お前が親友でいてくれるなんて俺は果報者だ。世の女たちも見る目がないぜ、こんなスーパークールなイケメンを放っておくんだからな』? もう、やだなぁ、やめてくれよぉ、そんなに褒められると照れちまうぜ!」

「……」

「……だからそんな顔するなってば、山川……」




 ※本日の替え歌元:「夜が明けた」岡本敏明 作詞/フランス民謡

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