職員室で鍵を借りよう!

「失礼しまーす! かーぎ、鍵、っと。生物室だよな、山川?」

「失礼しまーす。そうそう、生物室の鍵だな」

「俺、職員室で特別教室の鍵を借りるのって初めてかも。どうするんだっけ」

「そこに鍵のボックスがあるだろ。近くの先生に一言声を掛けて、目当ての鍵を取って、下の貸出ノートに必要事項を記入するだけだよ。返す時にも記入を忘れないようにな」

「ノート? お、これか。ええと、生物室、二年四組、田中卓也、っと」

「貸出時刻と、返却予定時刻も書いておけよ」

「へーい。今は十時四十分で、返却予定時刻……っていうと?」

「あくまで予定だからおおまかでいいけど、一応な」

「ええと、教材を持ち出すだけだから、三分もかからないよな。じゃあ、四十三分返却予定?」

「そこまで細かくチェックしないだろうが、思ったより時間が掛かる場合もあるし、ある程度余裕をもって時間を設定したほうがいいかもな」

「思ったより、時間が?」

「トラブルが無いとも限らないだろ」

「――教材を取り出そうと戸棚を開けたその瞬間、俺と山川に後ろから襲いかかってくるモトノブ君(人体模型)! 『お前ノ体を寄こせエェ……生きテいる、本物の体をヲヲヲ!』 逃げ場は無い! もう駄目かと思われた、その時、モトノブ君を羽交い締めにする新たな影! 『今のうちに逃げるんだ、タクヤ君、ケンゴ君!』『ウィリアム(骨格標本)!?』『この世界はもう危険だ! この鍵を使って窓際にある戸棚を開き、私の仲間が待つ世界へ! 君たちのことは彼らに頼んである!』『な、なんだって? ウィリアム、お前はどうするんだよ!』『私のことは構うな、早く!』『ウィ、ウィリアムーッ!』 ――なあ、山川、返却予定は三年後くらいでいい?」

「先生ー、生物室の鍵お借りしまーす、失礼しましたー」

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