田中君と山川君

購買で戦いに勝利しよう！

「♪歌うたーえ～、歌うたーえ～、歌えパンパンパンパンパ～ン！」

「また替え歌だとは分かりにくい替え歌を。どうした田中、購買に何か用か？　お前、さっき教室で弁当広げてなかったか」

「お、追いついたぞ、山川！　それがさあ、聞いてくれよ。今日は母ちゃん、俺と恭輔の二人分の弁当を作ってくれたんだ。ご飯が詰まった弁当箱と、おかずが詰まった弁当箱を二つずつ用意して蓋をしたところで、電話が掛かってきてさ。『卓也、恭輔、そこのお弁当箱二つずつ持っていきなさい！』……っていうわけで」

「……お前はダブルご飯か？　ダブルおかずか？」

「ダブルご飯！　ということは、恭輔はダブルおかずだな！　あっはっはー、無性にご飯が欲しくなればいいぜ、きょん！」

「自棄気味な笑いが切ないぞ。ちなみに、今日の翔悟の弁当はおにぎりだから、たぶん今頃二人で仲良くおかずとおにぎりを分け合ってるだろうな」

「ブ……ブルータス！」

「別に裏切ってはいないだろう。それでお前は、おかずになりそうなものを買いにきたってことか」

「おう、狙うは焼きそばパンだぜ！」

「米と麺とパンで炭水化物祭開催か」

「いやもう、ここまできたら、いっそ意地になってみようかなって。ところで、山川は何を買いにきたんだ？」

「コーヒー牛乳が飲みたかったんだが、相変わらず混雑してるな。中に入る隙すら見つからないぞ」

「愚図愚図してたら売り切れちまいそうだな。よし、山川、作戦Ｕを決行するぞ」

「作戦Ｕ？」

「『あ、ＵＦＯ！？』作戦。みんなが気を取られた隙にパンを奪取する」

「そんなのに反応するのは、小学生の心を未だに忘れないお前くらいのものだ」

「じゃあ、作戦Ｒ。『最期に……あの焼きそばパンを、もう一度食べたかった……！』作戦」

「小芝居するなら一人でやれよ」

「だったら作戦ＺＺ」

「一体いくつあるんだよ、作戦。全アルファベットに作戦が割り振られてるとして、７０２作戦？」

「ＺＺＺまであるぞ？」

「……１８２７８作戦？　俺は単独でＥＳＣ作戦を決行するからな」

「いーえすしー？」

「ＥＳＣＡＰＥ（エスケープ）。じゃあな、せいぜい頑張れよ」

「あ、あっあっ、諦めるな山川ぁぁぁ！」

　※本日の替え歌元：「うたえバンバン」阪田寛夫 作詞／山本直純 作曲