投票は責任を持って行おう!

「外が騒がしいと思ったら、街頭演説の声がここまで届いてたんだな。市長選ももうすぐか。俺たちに選挙権は無いとは言え、誰に決まるんだろうな」

「それも大事だけど山川、俺たちにも選挙権がある投票の方が先だぞ。ほい、投票用紙」

「ん? ああ、生徒会役員選挙か。ふうん、今年は人数通りしか立候補者が出なかったのか。信任投票だけなんだな」

「ううーん……どうしたもんか悩むよなぁ、どうしようかなぁ~」

「悩むって、何を悩むことがあるんだよ、田中。信任で構わないだろ」

「いや、安易に信任にはしたくない」

「は? なんだよ、候補者に気に食わないやつでもいるのか?」

「ううん、むしろ知らないやつばっかり。話したことも無いし、他の学年の候補者なんて、顔も分かんない」

「だったら無難に信任にしておけよ。正当な理由も無く不信任に丸を付けるのは、選挙妨害となんら変わらない悪質行為だぞ」

「だって山川、『信任』だぞ?」

「それがどうした」

「『信じて任せる』んだぞ?」

「そうだけど」

「『俺はお前を信じてる。そうさ、きっとお前なら、この学校を――俺達の学校を、今までよりもずっとずっといいものにしてくれる。だって、お前が誰よりこの学校を愛してるってこと、俺は知っているから。根拠なんてどこにも無い、でも信じてる。お前になら、俺は信じて任せられる!』」

「……」

「って、初対面のやつに言えるか?」

「あれ? なんか、不信任にしたくなってきた」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る