ハロウィーンに便乗しよう!

「山川、山川! トリィ~ック、オア~、トリィ~ットメント!」

「学校にトリートメントは置いてないだろうから、手洗い場のレモン石鹸でも持ってきてやるよ」

「レモン石鹸でヘアケアなんてしたら髪の毛バッサバサになっちゃう、じゃ、なくてぇ! そこは普通に、『それを言うならトリック・オア・トリートだろ』じゃないの、山川ぁ!」

「どうしてわざわざ親切にお前の期待するツッコミを入れてやる必要があるんだ。俺にそんな優しさを求めるお前が、根本的に間違ってる」

「山川の三十一分の十は優しさでできていますって、俺は信じてる」

「『それを言うならtrick or treatだろ』。ああ、今日は十月三十一日か」

「すっげぇ投げやりに希望を叶えてもらって胸中複雑だけど、そうだよ、今日はハロウィーンなんだよ! さぁ、選べ山川! 悪戯されるか、お菓子をあげるか、はたまたトリートメントか!」

「トリートメントが選択肢に残ってるのか」

「あえてそれを選ぶなら、トリートメントの一気飲みに挑戦してもらう」

「『悪戯かお菓子か服毒自殺か』じゃないか」

「無難にお菓子を選ぶなら、山川の手作りパンプキンパイで勘弁してやるぞ!」

「厚かましいにもほどがある。そもそも、なんで一方的に、どれを選んでも俺にメリットがない選択を迫られなけりゃいけないんだよ。イベント気分に浸りたいなら、せめて仮装して出直してこい」

「してるだろ。『男子高校生』の仮装」

「仮の装いだったのか」

「ほほう、山川、お前はそんなに俺の真の姿を拝みたいのか? ならばとくと見よ! 『男子高校生』とは仮の姿、田中卓也、その驚くべき正体とは……!」

「知ってるよ、『馬鹿な男子高校生』」

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