応急救護を習得しよう!~その4・患者の発見と周囲への呼びかけ~

「さぁ、いざ俺の番! いくぞ、やるぞ、助けるぞ俺!」

「意気込みはいいから、とっとと始めろ。ほら、患者発見から」

「おう、そこに倒れてるんだな。ちょっと待ってて山川、俺、向こうの壁際まで移動するから」

「は? 一体なんのために――」

「ヤスユキぃぃぃぃぃっ! どうした、どうしたんだヤスユキ、しっかりしろぉぉぉぉぉっ!」

「おい、俺は患者の名前を叫びながら十五メートル全力疾走する手本を見せた覚えは無いぞ。というか、今回の仮名はヤスユキなのか」

「名前がある方がその気になるし。リアル感が出て、助けなくちゃ、って思うだろ」

「どうでもいいけど、この練習人形に実在のモデルがいるのは知ってるか? スウェーデンの湖で溺れ死んだ女の子で、名前はアン」

「え、女の子? しかも外人さん?」

「ヤスユキと呼ぶのは可哀想かもな」

「テイクツー」

「やり直すのか。なぜまた十五メートル疾走から始めるんだ」

「ハァァァァイ、アン! ハウドゥユゥドゥゥゥゥゥ!」

「分からないなら無理に使うなよ、英語。何が『初めまして』だ」

「ふ、腐臭者発生! 周囲に危険無し、陰険は有り!」

「負傷者だろ。腐臭者だったらすでに死んでるから手遅れだ。あと、陰険ってのは俺のことか?」

「意識の確認! ハウアーユゥ? ファイン、センキューアンデュー? アイムファイン、センキュー!」

「だから分からないなら使うな。中一の英語テキストそのままか」

「意識無し! そこの山川、一一七番をお願いします!」

「はいはい。『午後二時十七分三十秒をお知らせします』」

「あ、あれぇ!? ええと、ええと、そこの山川……次、なんだっけ?」

「自動体外式除細動器。Automated External Defibrillator」

「……ビリビリ復活機を持って来てくださぁぁぁぁい!」

「あー、分かるような分からないような」

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