水道の蛇口はしっかり締めておこう!

「ん? あ、あーあー。あそこの水道、蛇口開けっ放しだぞ」

「ったく、誰の仕業か知らないが、だらしないな。締めておくか」

「おうとも! ぎゅっぎゅのぎゅ、と……まったく、水は、大切にしなくちゃ、いけないよなぁ」

「その通りだよ。渇水に苦しむ地域の人に目撃されたら非難囂々だぞ」

「一体、どのくらいの間、開けっ放し、だったんだろうな。短い時間なら、まだいいけど」

「水道代にしたって、自分の金じゃないと思ってるのかもしれないが、結局のところ税金だしな」

「そういうことは、ちゃんと意識して生活して、ほしいよなぁ」

「……おい、田中。お前、いつまで締め続けるつもりだ?」

「へ? ……あ」

「随分固く締めてたが、それ、ちゃんと開けられるんだろうな? 試してみろよ」

「……」

「……」

「開かねぇ」

「この馬鹿日本代表」

「うわ、やばい、ウンともスンともゾンとも言わねぇ! ピクリともモクリともしねぇ!」

「ゾンとかモクリとかってなんだよ、嫌な響きの擬態語を生み出すな。ちょっと代われ……うわ、本当に開かない」

「あー、やっちまったよ俺! どうしよう山川ぁぁぁ?」

「教室に工具なんて置いてないしな。俺達より握力が強そうなやつに声かけてみるか」

「あ、俺、いいこと考えた! この蛇口の上に、貼り紙しておこうぜ!」

「貼り紙って、『使用不可』とか?」

「『この蛇口からはコーラが出ます』」

「コーラが飲みたい誰かに頑張ってもらうつもりか。コーラ目当てで見事に開けてみせたやつがいたら、どう釈明するんだよ」

「『この蛇口を開けし者が真の王である』」

「アーサー王物語か」

「『この蛇口を開けたならば、ありとあらゆる恐ろしい災いが飛び出すだろう』」

「パンドラの箱か。って、もはや開ける気ないのか、お前」

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