避難訓練は速やかに行おう!

「うおぉ、びっくりした! 山川、なんだ、このでっかい音?」

「火災報知器のベルじゃないか? これ」

「なんだどうした何事だ? 地震か雷か、火事か親父か!」

「学校で『親父』の緊急事態っていうのは、どういう状況だ?」

「学校の教育方針について物申したいオヤジが、手が付けられないくらいの剣幕で学校に怒鳴り込んでくるとか」

「ああ、それは由々しき事態だな……じゃなくて。ほら、放送で言ってるだろ。火災訓練みたいだな」

「そんなのHRじゃ聞いてないよな。抜き打ち?」

「そうらしいな。真面目にやっておかないと、訓練終了後の先生からの小言が長くなるぞ」

「よし、じゃあ真剣かつ迅速に避難してやろうぜ! ええと、避難するときに守らなくちゃいけない大事なこと、何かあったよな。カカシがどうのこうのってやつ」

「『おかし』の原則のことか?」

「そう、それそれ!」

「懐かしい、小学生の訓練を思い出すな。じゃあ、そろそろ原則に従って避難するか」

「お:おんどりゃぁっ!

 か:かかってこいやぁっ!

 し:しゃらくせぇっ! ……だったな、行くぞ!」

「避難どころか立ち向かってるぞ」

「お:落ち着けぃ、逃れる道はまだ残されておる!

 か:必ず生き延びられよ――そしていつの日か、また逢おうぞ!

 し:然らば、これにて御免! ……だったっけ?」

「どこの武士だ、お前は」




 ※筆者が小学生のときに教わった標語。「おはし」「おはしも」などパターンは色々。

 お:押さない

 か(は):駆けない(走らない)

 し:喋らない

 も:戻らない

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