持ち物は計画的に持ち帰るようにしよう!

「田中、お前なぁ」

「何、山川、何か言いたいことでも? 『田中っていい男だよな』とか?」

「そんな戯言は脅されて強制されたとしても言うつもりはない。そうじゃなくて、なんなんだよ、お前の机。あとロッカー」

「机は机で、ロッカーはロッカー。それ以外の何物でもない。ちょうど、俺が俺以外の何者でもないようにな」

「格好良くないから。確かにお前は田中以外の何者でもないが、というより、お前のような人間が他にいてたまるか……ええい、話を脱線させるな。私物の量だよ、私物。長期休みまであと一週間も無いんだぞ、どうやって持ち帰る気だよ」

「俺の魔法のトランクで☆ ……ごめん冗談、そんな顔しないで山川! いやぁ、俺もそろそろやばいとは思ってるんだけどさー」

「こういうものは、必要が無くなった順に少しずつ持って帰れよ。ったく、小学生から全く進歩しないな」

「っていうか、学生って小学校の時から荷物が多すぎるんだよ。教科書ノートに加えてだぞ、小学校なら道具箱に鍵盤ハーモニカ、体操服に体育館シューズに上履き、水彩絵の具セットに習字道具、ソプラノリコーダーに裁縫セット! さらに溜まった作文と絵と習字!」

「まぁな。酷いときは鉢植えとか図工の作品とかもあったし」

「中学になったらなったで、アルトリコーダーにアクリル絵の具とスケブ、英和&和英辞典に歴史資料集に、教科書はより分厚く多くなり! 部活の用意だって半端な量じゃないんだぞ!」

「だから計画的に持ち帰れって話を」

「高校になってもまだ増える! 教科が増えた分、資料もプリントも倍増し! 通学距離も所用時間も長くなるのに、荷物は一向に減らないこの辛さ! ああ重い、棒とアヒルが並ぶ成績表が、テストの順位表が、『山川君に渡して♡』と押しつけられたラブレターの束が!」

「それは精神的な重さだろ」

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