原子番号を覚えよう!

「田中、化学のノート見たいって言ってたよな?」

「あ、そうそう、見たい見たい! 山川、貸してくれるの?」

「お前が勉強する気になるとは天変地異の前触れかもしれないが、赤点取った挙句に泣きつかれて追試の勉強に付き合わされるくらいなら、ノートを貸すくらいお安い御用だ」

「勉強っていうか、この間、先生が板書しながら何か歌ってただろ。俺はお昼寝タイムだったから、夢現に歌を聴きながら写し損ねちゃったんだけど、あとになって気になっちゃってさぁ」

「歌?」

「海賊がどうのとか、戦艦がどうのとか」

「……水兵、か? それに船? 原子番号の覚え方だろ、それ」

「げんしばんごー?」

「原子を価電子の数で並べたもの。水素(H)、ヘリウム(He)、リチウム(Li)、ベリリウム(Be)、ホウ素(B)、炭素(C)、窒素(N)、酸素(O)、フッ素(F)、ネオン(Ne)で、『水兵リーベ僕の船』」

「ああ、確かに、そんな歌詞だった! ♪水平リ~ベ、ぼっくのっふっね~、と! それで、その続きは? どんな歌か予想してみるから教えてくれ!」

「なぜあえて予想しようとするのか理解できないが。覚えるとしたら、ナトリウム(Na)、マグネシウム(Mg)、アルミニウム(Al)、ケイ素(Si)、リン(P)、硫黄(S)、塩素(Cl)、アルゴン(Ar)、カリウム(K)、カルシウム(Ca)、あたりまでかな。ほら、ノートのここだよ」

「ふむふむ。 ♪ナ~マアケリ~い~えア~カカカカ……」

「なんの呪文だ。『カ』が明らかに多いし」

「いやだってこれ、語呂合わせ難しいんだもん。ええい、ここはイマジネーションの見せどころだ、前の歌詞から想像の翼を働かせるんだ、俺!」

「歌さえ歌えれば原子番号はどうでもいいのか、お前」

「♪水兵リ~べ、ぼっくのっふっね~! 面舵一杯帆を上げろ~! 氷山激突沈没だ~!(効果音:ズゴゴゴゴ……)(セリフ:ああマイケル! 私、あなたとならばこの船と共に海へ沈もうと構わないわ! リンダ、僕も同じだよ――!)」

「とりあえず、化学の試験終了後に撃沈するお前の姿なら俺も予想できた」




 ※正しい歌詞の続きは「名前がある シップス クラークか」「七曲がり  シップス クラークか」など。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る