卒業する先輩は誠意を持って送り出そう!

「んー……むー……うー……ぐぎゅー……」

「何を変な声で唸ってるんだ、田中……ぐぎゅ?」

「お、ちょうど良いところに来たな山川! ぐっへへへ、飛んで火に入る夏の虫とはお前のことだぜぇ」

「最後の古典的悪役台詞はスルーするとして、なんだよ」

「スルーされたとして、助けてくれ山川! 悩んじゃって困っちゃってるんだよ!」

「悩んでる? それ、色紙だよな。部活の先輩にでも贈るのか」

「そう! 一、二年のみんなで寄せ書きして、卒業式のあとに渡すことになったんだけど。いざ書くとなると何を書けばいいやらさっぱりでさぁ」

「成程な。手軽にインパクトだけを残したいなら、大きく漢字一文字はどうだ? 『志』とか『夢』とか」

「『愛』とか?」

「それは……ちょっと重い、というか怖い……」

「じゃあ、『恋』」

「愛と恋のどちらがよりライトか知らないが、そういう問題じゃない。下手に気をてらって滑るくらいなら、もう、手堅くて無難なメッセージにしておけよ」

「例えば?」

「『〇〇先輩、ご卒業おめでとうございます』に始まり」

「ふんふん?」

「『短い間でしたが、先輩には大変お世話になりました』と続き」

「ほうほう?」

「『先輩との思い出は忘れません』となって」

「それからそれから?」

「『これからも先輩の夢に向かって頑張って下さい』で締める、とか」

「なーるほど! じゃあ、こんな感じだな? 『トシ先輩、落第ギリギリ回避でのご卒業おめでとうございます! 短い間でしたが、先輩には色んな意味で良くも悪くも大変お世話になりました! 先輩との思い出は、忘れたくても忘れられそうにありません! これからも先輩の『いつか油田で一発当ててモテモテの大富豪になる』という夢に向かって頑張って下さい!』」

「いちいち一言付け加えるな」

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