第60話

・・・・蛇足・・・・










 10年後、大学園をスキップで卒園した倫子は小学園で総合理化学を教えながら神殿に通う日々を続けている。教えることは倫子の中では当たり前のことだ。


 神殿の周りにも菜の花畑は広がり、菜の花の研究もずいぶん進んだ。




 広川は念願の留学を果たし、今は遠いイミグランドの地にいる。最近、年がずいぶん離れた彼氏が出来たと言ってきた。


「会ったら驚くわよ。」


と言って笑っている声が端末の向こうから聞こえてきたのは夕べのことだ。


いつか紹介してくれるというので楽しみができた。




 山名と冬彌は相変わらず仲よくつきあいを続けている。


 井部は政府の仕事に就いた。今は連合が本当に1つの国になるために奔走しているという。


 影・・・影はどうしているか倫子は知らない。




・・・・・




 倫子は神殿の祈りの間で今日も世界のために祈る。


 光は日々満ちていく。全ての上に平等に。


 もうヒカリの声は聞こえないけれど、いつもそばにいることは感じられる。




 悪意のある闇はどこにも気配はない。闇は優しく倫子達を包むだけだ。






 毎日のように通っている神殿の中の祈りの間。


 長い祈りから顔を上げた倫子は、いつものように倫太郎君の様子を見てから帰ろうと思った。・・・ちょうど10年前の今日、倫太郎は眠りについた。そんなことを思い出していると、ゆっくりとした足音が近づいてくる。


・・・開くドア・・・


「だれ?」


入ってくる人。車いすを押している?・・


車椅子に目をやる・・・あ・・・






「僕だ。倫太郎だ。」


車いすには倫太郎が乗っていた。


駆け寄っていく倫子。




16歳になった倫子と10年前とおんなじ姿・・・いや・・やせ細っている倫太郎。




二人とも言葉はいらない。倫子は車いすを押している神官とかわった。

車椅子を押す・・・


ゆっくり歩く。慌てることはない。また倫太郎が帰ってきたのだ。




二人で神殿の周りの菜の花畑に立つ。倫太郎はまだ車いすだけれど。目の前には金色に光る菜の花畑・・・金色に光る2匹の蝶々が戯れて飛んでいる・・・・ 金色に降り注ぐ光の中・・・




これからも安易な道ではないかもしれない二人なら乗り越えられる・・・二人はいつまでも広がる金色の菜の花畑の中に立っていた。











読んでいただいてありがとうございました。

このお話は2015年に、初めてネット上に出して、書き上げることができたものです。最初に菜の花畑にたつ二人のイメージから生まれたお話です。

今回は大幅に加筆して、前より読みやすくしたつもりです。

お気づきのことなどありましたら、コメントしてくださるとうれしいです。


この後は、影のその後のお話が続きます。よろしければ、引き続きお読みいただけるとうれしいです。






  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

金色の菜の花畑の向こうから 猫山  @moimoi2017

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ