第21話 私は大変な目に遭っている
・・・・
・・・今3人に囲まれて移動中。小さいから連れて行くのは簡単なようだ。
周りから隠されるように両手をとられ、引きずられている。
口元も何か布みたいなものがまるめて詰め込まれている。声を出そうにも喉が詰まりそうになるため、出すことができない。さらに、いつもならたくさんの生徒がいる時間なのになぜか誰もいない。計画的?それにしても誰もいないなんておかしい。
最初は抵抗してみたけれど、抵抗した拍子に襟から飛び出した指輪を鎖ごとむしり取られてしまったのだ。鎖を引きちぎられたとき、首からは血が出ている。血を見た途端、3人の気配がもっといやなものに変わったのだが、気のせいだろか。・・身をよじって抵抗しても捕まれている腕が痛いだけなので、おとなしく引きずられているのだが・・・・
・・・気のせいか・・・空気が重い。
この3人にも何か黒い物を感じるのは怖い思いをしているせいか・・・それとも本当に黒い影があるのだろうか・・・
何がしたいんだ?この感じだと、いじめか?
それにしても誰かに見つかったらまずい事態だろうに、なんでこんなことをしようとしているんだろう。こんな状態を見つかったら最後、この3人は間違いなく定額化、退学。そんなことも頭に入っていないんだろうか。それとも、まさか・・・私を消すつもり?
・・・痛めつけられるのも、消されるのも遠慮したい。
空き教室に連れ込まれる。
抱きかかえることはやめたけれど、腕だけはしっかり捕まえられて、真っ正面から怒鳴られる。
空気が濁る・・・黒いもやが辺りに立ちこめる。気分が急に悪くなる。
・・・・
「あなた、本当は何者なの?」
おお。単刀直入。
答えて欲しいのか?じゃあ詰め物を取ればいいのに、口なんかきけやしないことすら忘れているのか?!詰め物をしたことも忘れているって訳?
・・・
口の詰め物に加え、気分の悪さも手伝って黙っていたら、矢継ぎ早に問いは続く・・・
「なんでそんなに小さいくせにこう学園に通うのか。」
「ひいきか。」
「倫太郎さんの許嫁を降りろ。」
そんなに連続して怒鳴るように聞いてきたって、答える暇もない。
・・・・・・・・・
さらに質問の形をした罵倒は続き、ますます空気が重く感じられる・・・ 息苦しい上に頭痛もしてきた。
そこで、ようやく一人が私の口の詰め物に気がついたようで、
「詰め物とるわよ。大きな声出さないようにしなさいよ。」
って。いやいや、あなたたちの声、かなり大きいよ。未だに誰も不思議に思って見に来ないことの方が不思議だわ・・・
詰め物が取り除かれた。
私は思いきり咳き込み、えずいた。気分が悪い。
「なんであなたみたいなチビが倫太郎様に大事にされているの?」
「・・・そんなの倫太郎君に直接聞きなさいよ。」
咳き込みながらも、あまりのばかばかしさに思わずそう言ったら、急に藤井百華さんが切れた。
「生意気ながきめ!!!」
えっ
・・・・・
ドカッ ドサッ いたっ
足を思い切り蹴られた。これは痛かった。何という力だ。
蹴られたところがみるみる腫れ上がる。曲がっているようにも感じられる。
血?痛すぎる・・・
蹴った衝撃に抑えていた二人の手も離れた。
支えを失った私は仰向けに倒れた。そのままエビのように体を曲げ咳き込み続ける。
足で良かった。お腹なら下手したら死んでいる。
ぼんやりと考える・・・頭に黒い霞がかかったような気がする・・
倒れたまま見上げたら、それがさらに逆鱗に触れたらしく、また蹴ろうとするから、力を振り絞って、転がって逃げた。お腹のあたりを蹴られたら死んでしまうかも・・・押さえていた二人も衝撃によるより、そう思ったのかもしれない。藤井百花さんが私を蹴った途端に手を離したから。
・・逃げられてよかった。ちらっとそんな考えが浮かぶ。
・・・さらに蹴ろうと追いかけてくるではないか!!!
冗談じゃない。本気で蹴られたら、この小さい体は簡単に死んでしまう。そんなことも気がつかないのか!!!それとも蹴り殺すのが目的か?!!
他の二人は、さすがにまずいと思ったのか、百華を止めようとしているみたいだ。足が・・痛い・・・・・・激痛が走る。
そのとき、がたん・・と音がして、今まで寝ていたらしい人が、いすから立ち上がる。
「何をしているんだい?」
ああ。この声は・・・。
重い空気が少し薄まったような気がする。
「・・見りゃわかるでしょうが。見ていたんなら止めなさいよ。」
威勢よく言ったつもりが口から出る声は弱々しい。
「井部様・・・」
「あ・・あの・・これは・・・」
3人があたふたとしている様子が伝わってくる。ああ。助かった?のか・・
「いいわけは言わなくていいよ。一目瞭然だよな。」
そう思ったらさっさと間に入れよ!!!
思っても、あまりの痛さに、意識が遠くなる・・安心したらだめ・・・気を失っちゃだめ・・・そう思ったところで意識が途切れた・・
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