第12話 私は自己紹介をする

教室に行くと、やはり名簿順だった。一番後ろ~。その前にトイレに行かなくちゃ。


 教室から回れ右して出て行こうとすると、倫太郎君に捕まった。


「どこに行くの?」

そんなに心配そうな顔をしないで・・


「自然が呼んでいるの。」

にっこり笑って言えば、

「連れて行くよ。」

え。女子トイレまでだよ。

そのとき後ろから声をかけてきたのはあの3人だった。


「倫太郎様、私たちがお連れしますわ。女性用のところですもの。」


 後ろから聞こえるその声に倫太郎君は顔をしかめる。本当にいやそうだ。仕方ないから私が納めてみることにした。

「女性用だから、案内してもらう。その方が倫太郎君も変な目で見られなくていいんじゃない?」

そういえば、心底不思議そうな声で聞き返されてしまった。

「変な目?」

・・・はっきり言わなきゃだめなのかな?

「女性用休息室前で待つってことは・・・」

さすがにそこまで言ったら分かったみたいで言葉を遮られた。

「分かったよ。不本意だが・・・頼む。」


 最後の「頼む」は,3人娘に言った言葉らしい。


 3人につれられてトイレへ。


 トイレも大人用は若干高い。苦労するなぁ。




 トイレへの道すがら3人娘はいろいろ探りを入れてくる。60歳から見たら、青い青い。


 当たり障りなく受け答えして無事教室に。


 教室の前でうろうろしているあれは倫太郎君。どれだけ過保護。


・・・・・


 席についてしばらくすると先生が入ってきた。


 落ち着いた感じの3~40代の男の先生だ。


 その後ろに20代くらいの男の人も続いてきた。




 担任の先生は、東野 康司と名乗った。あの東野先生のお子さんらしい。


 20代の先生は三波先生。副担任だと言うことだ。


 生徒の数は40名。副担任も必要だよね。私が最後に持った子ども達は、4年生だったけれど、24人だったわ。40人は多いわねえ。でも小さい子と違うから大丈夫なのかな。




 東野先生は歴史学の先生だそうだ。やっぱりねぇ。


 今後の授業カリキュラムの話を聞いた後、お約束の自己紹介の時間。


 私は最後だからみんなの言うことを聞いて何を言うか考えよう。と思っていたら、


「1番は、名簿の最後から行きましょうか。


 皆さんも多分聞きたくてうずうずしているでしょうからね。


 はい。若槻 倫子さん。」




「・・・・・」


 泣いて見せてやろうか・・・ふん


 おばちゃんをなめるなよ。


「皆様、初めまして。私は若槻倫子と言います。6歳です。よろしくお願いいたします。」


 余計なことはしゃべらない。どこまで話していいものか分からないから。6歳のところでどよっとざわめきが聞こえた。中身60歳ですって言いたい。




「若槻さんは、歴史・天文・呪術以外は満点の成績で飛び級を果たされたんですよ。」 


 ザワザワ・・・・


 そんないらない情報を・・でも、あの3科目以外満点だったのか。偉いぞ私。あの3科目は何点だったのかな。結構思ったまま書いたんだけど。




「その3科目は「何点だったのですか?」」


おいおい、個人情報だぞ。この世界にはそんな概念はないのかい???


「75点、70点、70点ですね。」


 ・・・シーン・・・




 だって記述式の他は,ほとんど○×式だったんだ。どれか選べば・・・確率の問題だと思うんだけどな。・・




 その後、気を取り直した級友達の自己紹介は続いていった。




 倫太郎君が立ち上がった。空気がキンと冴え渡ったような気がする。




「城山 倫太郎です。さっきの若槻さんとは、内の関係にあります。今、一緒に住んでいますのでご承知おきください。」


 内の関係と言ったとたん女性徒の悲鳴が響いた。


 なに?ウチノ カンケイ?どういう意味?


「やっぱりおまえ、ロリコンじゃん。」


 そういった生徒はさっき倫太郎君にロリコン発言した生徒だ。


「何とでもおっしゃってください。」


 倫太郎君はそう言って座った。ざわめきはおさまりそうにない・・・



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