第6話 私はまた驚いている
目の前に置かれた指輪がたくさん入った箱に私は目を見張った。
守護リングって言ってた。
守護リングって何?・・・後で説明するって・・・
・・・あぁ私がこの辺の人じゃなくて、説明しなくては分かってないってことを知られたくないのかな。
「倫子ちゃんはどんなのが好き?」
実は私は指輪が好きだ。いろんな物を持っている。でも年のせいか、指の節々が毎年ごつくなってきてお気に入りもはめられなくなってきていた。毎年サイズ直しするのもしゃくで最近はほとんどしていなかった。
「選んで。」
倫太郎君が即す。
「でも」
「指輪は嫌い?」
「好きだけれど・・・この指ではサイズが・・・」
「それでもいいんだ。一番気に入った物を選んで欲しいんだ。」
指輪には値段がついていない。
「値段なんか考えなくていいんだよ。」
「でも・・倫太郎君はまだ学生でしょ。自分のお金なんて無いはずだよ。」
倫太郎君は苦笑していった。
「大丈夫だよ。僕は結構稼いでいるんだ。」
???
「僕はね。優秀な占い師なんだよ。」
???
「この話も家に帰ってからゆっくりと。」
家に帰ってから聞く話がまた増えた。
女の子達のこと、守護リングのこと・・そして占い師?のこと。
とりあえず、指輪に関心を戻さねば。きっと選ぶまでここにいるに違いないから。
「これなんかどうかなぁ。」
倫太郎君が見せてくる。金色に光る花々の中心にルビー、サファイア、エメラルド・・・ダイヤを配している華やかな指輪だ。いやちょっとそれは・・・
「じゃあ、こっち。」
倫太郎君は、花の形をした指輪を薦めたいらしい。
薦めてきた3つの指輪はどれも華やかできらきらしい花がデザインされている。
花の指輪が好きなのかな。
・・・君の指に花の指輪がはまっている幻を見たのさ。つぶやくように言ってにっこりする。
「どんなのだったかよく覚えていないけれどね。
だってもう君のほうで言うと50年も前の話だからね。」
耳元で倫太郎君がこそこそ話す。くすぐったい。
「もう・・倫太郎君が決めたのでいいよ。」
倫太郎君は嬉々として最初に選んだ指輪に決める。派手だなぁ。
サイズを確認したら8号だった。昔の指輪のサイズだ。多分これで大丈夫・・・かもしれない。最終的には・・・60才だけど・・・11号くらいにしないと入らないと思うんだけれど。ここではまだまだ先のこと?
「鎖に通したいので、今度は鎖を見せてください。」
倫太郎君の言葉に、箱を片付けたお店の人が別の箱を運んでくる。今度の箱は2個だけ。
全部金の鎖だ。鎖にもいろいろあるよね。うん。
倫太郎君は50センチくらいの少し太めの鎖を選んだ。
すぐ切れないようにするためだよ。なんて笑っている。
そのまま指輪を鎖に通し、私につけてくれる。
「後で祈りを込めるよ。」
「祈りを込める?」
これまた聞き慣れないような。
「後で話すよ。」
4つめの後で話すよ・・・だ。
箱を片付けた店員さんがお茶を出してくれた。ハーブティーにミニケーキだ。
美味しい。
どうもこの体はものを食べるときこぼしやすい。今もケーキがお皿にぽろぽろ落ちる。お皿を持ち上げておいて正解だった。お皿重い。
それからまた通りに出てあちこち歩く。休んだおかげであまり疲れていない。
文房具屋さんみたいなところに入る。
倫太郎君はノートやペンなどを注文していた。
後で屋敷に届けてもらうらしい。
私は猫のイラスト付きのペンケースや小物を見ていた。どうも背が低くなっているせいか、よくみられないことが残念だ。そうしたらいつの間にか坂木さんが来ていて、見たい物をとってくれた。
「ありがとう」
「猫がお好きなんですか?」
「ええ。そうなんです。かわいいですよね。」
昔飼っていた猫を思い出す。母が拾ってきた猫で、最初はなつかなくて困ったっけ・・・それがだんだんなついて・・膝の上に乗ってくるようになって。かわいかったなあ・・・引っ越しの時いなくなっちゃったけど・・・悲しかったなあ・・・
「いこうか。」
倫太郎君に声をかけられたので、店を出る。
「疲れたでしょ。もうすぐお昼だから。この先のレストランに行こうね。」
レストランは明るくてきれいなところだった。
「おすすめのランチA・B・C・・・迷っちゃう。」
「どれも美味しいよ。今日のおすすめなんてメニューもあるんだよ。」
「おきまりになりましたか?お嬢さんにはお子様ランチもご用意できますよ。」
・・・お子様ランチ・・・確かに見た目は6歳だから・・・いやしかし・・・むっとして,
「Aランチにします。」
大丈夫か?と言う目で見られている。
いいもん。・・・あれ?思考が60じゃなくなりつつある?・・・・
「僕は今日のおすすめランチにするよ。彼女の分は少なめにしてくれる?」
「はい。分かりました。今日のおすすめランチ1つとA定食小盛りでよろしかったですか。」
「はい。」
結論から言えば、小盛りでもAランチは食べきれなかった。倫太郎君が手伝ってくれたので残すことは無かったけれど・・・少し悔しい。
レストランを出ると、黒い車が止まっていた。
私たちを見ると助手席に乗っていた人が降りてきた。坂木さんだ。
後ろのドアを開けてくれながら
「どうぞ」
と言う。
車に乗り込むとすぐ神殿に向かって車が走り出すかと思ったら、
「学校を見に行こう」
と倫太郎君が言った。
「倫太郎君が行く学校?」
「そうでもあるよ。」
「どういうこと?」
「倫子ちゃん、君もこの世界の学校に通ってみないか。」
「通うって?」
「低学園の生徒としてさ。」
「は?」
・・・
私・・・大学、40年近く前に卒業しているんですけど。ついでに大学院も出ちゃっているんですけど。
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