第445話 いつの日か
≪復元記憶データ≫
ディヤウス誕生。
異母兄弟神たちとの初めての出会い。
仁義なき兄弟げんか。
父神が死んだ日のこと。
光と闇の戦いの果てに。
後継者としての苦悩。
裏切り、その瞬間。
今際の時。
≪復元録画データ≫
全てを受け継いだ君へ。
「他にもありますが、重要そうなものを一覧にしてピックアップしました」
俺の分身であるということだから、当たり前ではあるのだがその顔の造形は鏡で見るロランそのままであった。
しかし、その表情は乏しく機械的で、自分のそっくりさんというよりは、ロランをモデルにしたアンドロイドという感じだった。
身体の表面は鈍い光沢がある金属質で、ロボットと人の中間のようなデザインであることが現時点でもわかる。
なんだ、結構普通にかっこよくて、気持ち半分がっかりした。
ドキドキを返してほしい。
「うん、グッジョブ。俺の分身とは思えないほどに仕事ができるね。この……、≪復元録画データ≫って何?」
「これはディヤウスが事前に録画した映像を≪オペーションシステム:ディヤウス≫に添付していたもののようです。これには二重の防護シールドがかけられており、特に厳重な閲覧規制がかかっていました」
「ふぅん、そっか。じゃあ、時間もあまり無いし、とりあえず≪復元記憶データ≫の『裏切り、その瞬間』と『今際の時』。そして『全てを受け継いだ君へ』を続けてみせてもらえる? 尺、足りるよね」
「断片化したデータなので、全てを見ても二分ほど余ります」
「オーケー。じゃあ、よろしく頼むよ」
目を閉じたロランの脳裏に『裏切り、その瞬間』のロゴタイトルが浮かぶ。
この短い時間に編集までしているとは、やはり
「ヤルダ!やはり裏切ったな。なぜだ、……なぜ僕を裏切った?」
どこかを負傷しているらしく、乱れた息の苦しそうな声が脳内に再生された。
タイトルと映像の趣旨からすると、どうやらこの声の主がディヤウスであるらしい。
視界が霞んではいるが、その視線の先には先ほど玉座にいるのを見たあの老人がおり、こちらに向けて掌を向けている。
「なぜだと? 貴様のように恵まれた境遇の神にはわかるまい。父は偉大なる創造神。愚かな兄神たちは自滅し、労せずしてこの世界を手にすることができた貴様のようなボンボンにはな。ワシは妬ましかったのだ。若く、前途洋々たるお前がな」
「妬み? そんな理由で僕を裏切ったのか。父の代からこのカドゥ・クワーズの治世を支えてくれたお前には感謝していたし、多くの知識を与えてくれたことも感謝していた。父の次に尊敬していたんだ!お前を」
急に目線が上がり、じじいの顔を見上げるような光景になった。
どうやらディヤウスは膝をつき、動けない状況になったようだ。
「尊敬など要らぬ。ワシが欲しかったのはこのカドゥ・クワーズの世界のみ。神としての生の大半を日の当たらぬ裏方に徹し続けていたのは今日のこの日のためだ。神は人間などの創造物の信仰を得られねば、寿命の通り死ぬ。だが、ワシの存在を人間たちが認識し、必要としてくれれば永遠に生き続けられるのだ。ワシがお前に成り代わり、これからこのカドゥ・クワーズの主神として、未来永劫と君臨し続けるのだ!」
「……ヤルダ。それほど長く生きてなお生き続けたいのか? 他者を排除してまでしがみ付く価値が、その生にはあるのか?」
「黙れ!貴様などには永遠にわからぬ。そうだ。最後にいいことを教えてやろう。貴様の父グナーシス神を殺したのはワシだ。今、同じ技でお前も葬ってくれるぞ。ワシの最強最大の神技≪
ここで一度暗転し、次のタイトルロゴ「今際の時」が現われる。
さっきのもそうだが、テイストがエヴァンゲリ〇ン風なのは、なぜだろう。
「……何という……ことだ。せっかく用意していた≪オペーションシステム:ディヤウス≫のスフィアに亀裂が……。しかし、もうこのスフィアにすべてを託すしかない。行け、プログラムスフィアよ。この空間内のエネルギーに擬態し、時を待て。奴にこの≪
目に浮かぶ光景は床の模様だけだった。
ちょうどこの場所と同じ≪
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