第405話 人間光

そうか!

天地魔〇の構えがあったじゃないか。


俺の方が速いんだし、相手の攻撃を右手か左手の攻撃で相殺しつつ反撃し、さらに人間力じんかんりょくを放出してカ〇ザーフェニックス代わりに追撃させれば俺にも可能だ。


なんていうことを、ふと思いついたけど、せっかくだから「チュートリアルモード1」とやらを体験してみることにした。


ぽちっとな。


「はい」を選択すると、すぐ近くまで迫ってきていたリヴィウス神の動きがピタッと止まった。


リヴィウス神だけではない。


この戦いの行方を見守る全ての者がその動きを止め、風の音さえ消えてしまった。


≪カク・ヨム≫の創作タイムやつい先日の謎のダウンロード中の状態のように時間が止まったことをロランは確信した。


『チュートリアルモード1が開始されました。人間光じんかんこうの使用方法に関するチュートリアルを開始します』


K・Yカク・ヨムアヴァターが現れ、その頭上のデジタル表示のタイマー「0.30.00」が動き出す。


どうやら、効果時間は30分らしい。


人間光じんかんこうは、光と闇の狭間に揺れる人間の心の光です。その心は、人間であるがゆえに性質が移ろいやすく、それゆえに万能の力を有します』


ロランの心の中心から自然と多色多彩な光が溢れてきた。

赤、橙、黃、緑、青、藍 、紫……黒まである。


虹の七色を優に超えるド派手な彩色。


それはまさに初めてスキル≪カク・ヨム≫を授かった時に、宝玉から放たれた超レインボーの光そのものだった。


『それがあなたの、そして人間の真なる心の光です。その光はいつでもあなたの心から引き出すことができ、このカドゥ・クワーズの世界に様々な現象フェノメノンを引き起こします。しかし、便宜上、そしてあなたの情報処理負荷の軽減のため、平常時は以下の効果を選択して使用することになります。使用時は、あなたの分身にして、外部的補助機能たるこのK・Yカク・ヨムアヴァターにお命じください』


目の前になにやら文字に埋め尽くされた半透明のウィンドウが出現する。


人間光じんかんこうによる奇跡ミラクル一覧。


①SAYウンの光(SAYウン それは 君がみた光 ぼくがみた希望)


人間光じんかんこうにより分身を作る。

作られた分身には簡単な動作をさせることができ、倒されるとどこか懐かしいお盆の香りを残し、煙となって消える。


陽動ようどうらんの光


人間光じんかんこうにより、精神的ダメージと幻覚を引き起こす光球を生み出す。

この光球を受けた対象は、その精神力の強弱により様々な影響を受け、その効果の種類自体は対象者の個性に依存する。


弩呼喪どこもの光


人間光じんかんこうにより離れた場所にいる相手と心と心で繋がる。

特定の相手と秘密裏に会話したり、入眠しようとしている相手に話しかけ続けて嫌がらせをすることなどができる。


人間光線療法じんかんこうせんりょうほう


光線療法の強化版。だいたい治る。


⑤無明一閃


人間光じんかんこうを変換して、破壊のエネルギーをもつ光線として放つ。


⑥無敵人化


心の中に残った希望の光を一時的に消し去り、「無敵の人」と化す。

すべてのステータスが上がり、戦闘能力が飛躍的に向上するが制御不能の殺戮マシーンと化し、視界に映る全ての対象が死に絶えるまで戦い続ける。


⑦人間だもの


実現したい事象、拒絶したい事象を文章で発声し、最後に「人間だもの」で結ぶことで効果を発揮する。

実際に何が起こるかは、K・Yカク・ヨムアヴァターがオーダーに応じて判断するが、あくまでも人間光じんかんこうを利用した奇跡ミラクルなのでできないことも多くあるが仕方ない。だって、人間だもの。



「うわっ、なんだこれ。ネーミングもうちょっと何とかならなかったの? ダジャレみたいなやつまであるし、これって各所から苦情とかこないよね?」


『ネーミングセンスについて文句を言うのは自らを貶めることになりますよ。この私、K・Yカク・ヨムアヴァターは他ならぬあなた自身。この名称はあなたの無意識下から出たもので、あなた自身が……』


「あ~、わかった、わかった。お前が俺自身だっていうのは不思議と確信があるから、まあそういうことにしておくけど、この人間光じんかんこうってあくまでも、≪カク・ヨム≫とは関係ない力なんだよね?」


『はい、Exactly(そのとおりでございます)。人間光じんかんこうは、荒人神あらひとがみの固有能力であり、心的エネルギーです』


「真なる人間力じんかんりょくだっけ?紛らわしいネーミングだけど、これとはどう違うの」


人間力じんかんりょくは、荒人神あらひとがみの肉体に宿る物理的なエネルギーです。魔闘気や聖光気と同様の使い方ができ、より戦闘向きですが、心的エネルギーである人間光じんかんこうと比べると有限的で、用途の幅も狭いと言えます』


「ふ~ん、わかったような、わからないような……」


『この人知を超える大いなる力を一度に理解しようというのは無理というもの。それゆえにこのチュートリアルモード1とこのK・Yカク・ヨムアヴァターが存在するのです。まずは色々試して学習していきましょう』


色々試してって言われても、この七つの奇跡ミラクルで有効そうなのは限られてるよね。


①≪SAYウンの光≫は、身代わりということで防御に使えそうだけど、直接決め手にならないし、②≪陽動ようどうらんの光≫は人間相手に良さそうだけど、神であるリヴィウスに効果あるのかな?


③≪弩呼喪どこもの光≫は通信用だし、④人間光線療法じんかんこうせんりょうほうは回復魔法的なものかな。

だいたい治るってすごいアバウトだが解説書く途中で、こいつ飽きたな。


⑥≪無敵人化≫はやばすぎてどう考えて使いどころがなさそうだし、⑦≪人間だもの≫はよくわからん。思えば自然に使ってたような気もするけど、あれもそうなのであろうか。


ということで、消去法でいくと、この状況では⑤≪無明一閃≫一択である。


『≪無明一閃≫ですね。人差し指と中指を揃えて眉間に当ててください。あとはお好みの人間光じんかんこうの蓄積具合で対象に向けて放つだけです』


ロランは、K・Yカク・ヨムアヴァターに言われたとおりのポーズを取り、ふと気が付いた。


やばい。


これって、魔貫光〇砲じゃん!






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