第121話 これには触れるな

こういう場面において、小説や漫画の主人公であれば迷わず後を追って、聖櫃せいひつの中に飛び込むのであろう。


だが、高橋文明おれは敢えて、行かないことに決めた。


中の様子は戻ってきた人に聞けばだいたいわかるし、戻ってこなかったらそっとこの場を立ち去ろう。


調査任務失敗を報告する人だって必要なはずだ。


だいたい、俺が調査隊の責任者であったなら、全員で聖櫃せいひつ内に飛び込んだりしない。


半分、いや少なくとも三分の一はこの場に残し、出口を確保しておく。


子供の遠足ではないのである。

興味がある方向にぞろぞろ付いていってどうするというのだ。

役割分担をしっかり決めて、計画的に調査するべきではないのか。


「ぴーちゃんもそう思うだろ?」


黄色い鳥さんことカリストに問いかけてみたが、返事はなかった。



そうだ。暇だし、この機会に≪カク・ヨム≫にログインしてみよう。

鋭すぎるシーム先生はいないし、他者の目もない。

いくら賢いと言ってもピーちゃんは鳥だから何をしているかわからないだろうし、チャンスは今しかない。


スキル≪カク・ヨム≫の熟練度じゅくれんどアップによって何が変わったのか確認してみよう。


「カク・ヨム、ログイン」


ロランがそう呟くと目の前に他者には視認できない半透明のダッシュボードが現れ、右上のベル形のアイコンには小さい赤丸が付いている。


そのアイコンをタップして、通知欄を開くと一番上には、「会長、逮〇」の文字があったがヤバそうなので、これには触れないでおこう。

何の会長なのかもわからないが、本能がと叫んでいる。


通知欄つうちらんには相変わらず謎の読者からの応援コメントの通知が並び、少しスクロールした先に『スキル≪カク・ヨム≫の熟練度がFからEになりました!』の通知を見つけた。


その通知をタップしてみる。



スキル≪カク・ヨム≫熟練度Eの使用方法。

スキル使用の対象は、人間及びそれに類する存在(

使用回数は一日に一回。

対象一人につき一年に一回。

一回の発動につき以下の①、②、③、④のうち一つだけ使うことができる。


①プロフィール・リライト

、30文字→35文字)

書く文字と消す文字の合計が35文字以内ならプロフィール欄を書き直すことができる。ただし、現実世界と大きく矛盾むじゅんし整合性がとれない内容は書き込むことができない。


②ステータス・リライト

、2文字→3文字)

書きこむ数字と消す数字の合計が3文字以内であれば能力値を書き直すことができる。


③スキル・リライト

、2文字→4文字)

書く文字と消す文字の合計が4文字以内であればスキル名を書き直すことができる。ただし、現実として存在しないスキル名にすることは出来ない。

また、書き直せるのは1回に付き1スキルまでである。


④ネクスト・アクション・リライト  NEW

書く文字と消す文字の合計が10文字以内であれば対象者の次の行動を書き直すことができる。

ただし、人体の構造上不可能な行動をとらせることは出来ない。



おお、やれることも増えているし、各スキルの改稿可能文字数もアップしている。


これだけ文字数があれば、スキルの使い方にも幅ができるし、かなり強化されたと言えるんじゃないだろうか。


④の≪ネクスト・アクション・リライト≫も読んだ限りではかなり実戦向きな印象だ。

襲い掛かってきた敵の行動をキャンセルしたり、同士討ちさせたりなんかもできるかもしれない。


一段階、熟練度上がっただけでこれだけの上り幅であれば、今後のスキルの成長にも期待が持てるというものである。


PVをバンバンかせいで次の熟練度目指しちゃおうかな。


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