第7話 ステータス・リライト
大聖堂で待っていた父アキムと合流したロランは、カルカッソンの宿で一泊し、翌朝ウソン村への帰路についた。
帰りの道中でアキムは、ロランのスキルが農業関連のスキルではなかったことについて、やさしく慰めてきた。
「なあ、ロラン。父さんはお前のスキルだって、農業の役に立つと思うぞ。収穫の帳簿をつけたり、毎年の天候や作付の記録をつけるのに役に立つ。がっかりすることないぞ」
アキムにはスキル『カク・ヨム』の本当の効果については話していない。
ただ読み書きが人より良くできるスキルとだけ伝えてある。
それにしてもアキムの頭の中は相変わらず農業のことでいっぱいだ。
『カク・ヨム』のスキルを使ってみたら、アキムはどんな感じのプロフィールなんだろう。
気になり始まると知らずにはいられない、それが人間というものだろう。
思ったら、やる。それが俺。
「カク・ヨム!」
父に向かって、手をかざす。
風の音が止み、辺りは静寂に包まれた。
そして父アキムは、まるで時間が止まったかのように動かなくなった。
『スキル≪カク・ヨム≫が発動しました。農民アキムのステータスを表示します』
名前:アキム
種族:人間
性別:男
職業:農民
年齢:32歳
星:0
PV:1
ハート:0
レビュー:0
フォロワー:0
レベル:23
HP:29
MP:11
筋力:18
体力:15
器用:14
敏捷:10
知力:12
魔力:6
信仰心:10
こうげきりょく:25
ぼうぎょりょく:20
天賦スキル:農地運営C
習得スキル:開墾D、酪農E
≪直近のプロフィール≫
ウソン村の農民。ロランの父。小作農たちのまとめ役を任されている。
今年の天候不順による不作を心配している。
あまり良いスキルを授からなかったと話す息子の将来を心配している。
親父、結構若いな。
前世の俺より年下か。
そして、レベル高っ。
エセ宗教家の司祭の二倍ぐらいある。
RPGゲームだとモンスターを倒さなければレベルアップしないけど、この世界ではどういう仕組みなのだろうか。
朝早くから夜遅くまで働いているから、そういった努力も経験値になるのかもしれない。
信仰心は、司祭の五倍あるけど、これは司祭が低いのかアキムが高いのかはちょっとわからない。
『スキル≪カク・ヨム≫の創作タイムが始まります。5分以内で農民アキムを改稿してください。改稿が終わったら、公開ボタンを押してください』
司祭には、≪プロフィール・リライト≫を試したけど、せっかくだからアキムには≪ステータス・リライト≫を使ってみよう。
たしか、書きこむ数字と消す数字の合計が2文字以内であれば能力値を書き直すことができるんだったな。
いつも疲れた顔して辛そうだから、『体力:15』を『体力:95』に書き換えてあげよう。十の桁の1を消して9を書き込む。
ステータス右上の≪公開≫ボタンを押す。
≪カク・ヨム≫の創作タイムが解除されて父アキムが動き出す。
「うん? ロラン、私は何をしていたんだろう。ああ、なんか父さん、身体の調子が良くなった気がするぞ」
アキムは首の骨をコキコキと鳴らし、肩をぐるぐる回した。
たしかに血色が良くなっっている。
目のクマは取れ、何歳か若返ったような気さえする。
「さあ、作物が心配だ。はやく村に戻ろう」
アキムは、血色が良くなった顔に笑みを浮かべ、足取りも軽く、ウソン村へ向かって歩き出した。
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