第8話 ダッシュボード
『作品の数が2を越えたので、ダッシュボードが解放されました。使用の際は、「カク・ヨム、ログイン」と念じるか、発声してください。ダッシュボードを消す際は、同様に「カク・ヨム、ログアウト」と念じるか、発声してください。』
目の前に、突然、日本語で書かれたメッセージボードが現れる。
ロランは、心の中で「カク・ヨム、ログイン」と念じた。
≪ダッシュボード≫
最近改稿した人物
農民アキム フォロワー:0、星:1、ハート:1/1、PV6
司祭ニコラ フォロワー:0、星:0、ハート:0、PV1
これがダッシュボードか。
何の意味があるか、よくわからない。
例の小説投稿サイトのようなステータス内容の抜粋といったところなのか。
最初にスキル『カク・ヨム』を使った司祭ニコラには変化がなかったが、父アキムの星、ハート、PVが増えていた。
しかもハートの部分が1/1になっているがこれは何だろう。
よく見るとダッシュボードの上に鐘のマークがあり、触ると≪通知≫と呼ばれる項目が展開した。
『農民アキムに応援コメントが付きました』の通知がある。
ダイコクさんからの応援コメント
「農民アキムさん、ヤバい能力値になってしまいましたね。今後の展開に期待です」
なんだこれ?
俺が、『カク・ヨム』で改稿した人物を誰かが読んでいるのか。
ということはPVは、やっぱり読者の数か。
読者って、どこの誰が読んでいるんだよ。
やっぱり、このスキルは謎過ぎる。
それにしても司祭ニコラ、人気ねえな。
俺が書いていたネット小説みたいだ。
投稿して何日たってもPVは増えないし、「いいね」も、もらえない。
モチベーション急降下のパターンだ。
読んでつまらないなら、それはしょうがない。
でも読んですらもらってないってことだからな。
「おい、ロラン。さっきから何ぶつぶつ言っているんだ。疲れたのか? 少し休もうか」
アキムが心配そうに声をかけてきた。
心の中で「カク・ヨム、ログアウト」と念じるとダッシュボードが消えた。
「ううん、父さん。全然疲れてないよ」
嘘だ。本当はめちゃめちゃ疲れている。
体力が『体力:95』なった影響か、アキムはほとんど休憩もとらずひたすら歩き続けている。
だんだん遅れがちになるロランを待つ間、道端で腕立て伏せをしたり、屈伸運動をして体を鍛える余裕があるほどだ。
それからしばらく歩いた後、ようやくロランの体力の限界に気付いたのか、アキムは背を貸してくれた。
俺の足は、もうとっくに限界で関節のあちこちが悲鳴を上げていたので大人しく甘えることにした。
一応、遺伝子上の父だからか、おっさんの汗臭い背中だが気にはならなかった。
疲労もあったせいか、背中の温もりを感じながら、うとうとしてしまう。
しばらくして気が付くと、俺は父の背で朝を迎えたようだった。
父の背に沢山、ヨダレを垂らしてしまった。
アキムは俺を背負ったまま、一晩中歩き続けていたらしい。
「おはよう、ロラン。見ろ、農作業日和の青空だぞ」
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