ゲームのような

バブみ道日丿宮組

お題:生かされたところてん 制限時間:15分

ゲームのような

 最後の最後に拾ったアイテムが役に立つとは思わなかった。

「みんないる?」

 トンネルの真下まで落下して光源がないからよく見えない。

「だ、大丈夫だよ、生徒会長」

「こっちも、あ、懐中電灯つけますね」

 声と同時に視界が眩しくて一瞬眩みそうになってなんとかその場に踏みとどまって抑えた。いや、抑えてくれたのはこのところてんのおかげか。

 ぷにぷにしてて、まさかの利用方法だったけど問題なさそうでよかった。

「しかし、このゲームみたいな屋敷は何なんですか?」

「それを調べるのが生徒会の仕事だよ」

 副生徒会長と、書紀が口論しはじめたので光が必然的に書紀へと移る。眼鏡が若干ヒビが入ってた。おそらく落下する時にぶつかったのかもしれない。

 それでもたったそれだけですんだのは、

「二人とも落ち着いて、ゲームみたいな世界ならクリアしないといけない」

 そうしたら、出れるし生徒会に届いた意見箱もなんとかできるかもしれない。


 意見箱に入ってたのは、

『いなくなった友だちを探して下さい。最後の目撃場所はここです』

 という紙と、その目撃場所が記されたと思われる地図。


「生徒会長、まじに言ってるんですか? 大体差出人がいない意見なんて本当に母校の生徒の意見なんですか?」

 副生徒会長は依然としてこの屋敷に入ったときから意見をかえない。

「おかげでこんなひっどい状況になっちゃってるじゃないですか!」

「まぁまぁこんな面白いことが生徒会の仕事でできるならたまにはいいんじゃないですかね?」

 もうと怒った副生徒会長が書紀に近づこうとして、足元がところてんだったことを忘れてそのまま倒れた。

「副会長気をつけてくださいよ。足場悪いんですから」

「……わかってるわよ。わかってるわよ、クリアすればいいんでしょ!」

 倒れた副生徒会長がこちらにライトを向けてくる。

「ところてんを消せばいいのね。わかったわ」

 待ってという言葉が私に届いた時、副生徒会長のぐてぇというへんな声が耳元に届いた。

「せ、せ、生徒会長! 消すのは確かに目配りしましたがすぐにとは言ってません!」

 起き上がって迫ってくる副生徒会長はちょっと怖かった。

 屋敷にいたへんな蠢く本たちよりもずっとホラーだった。

「わ、わかったから、ほ、ほら先に進みましょう?」

 沸点が最上級まで高まると手がつけられないのは知ってるから、肩を掴んで落ちたトンネルの先に進ませる。

「ちょ、ちょっと押さないでくださいよ! な、何があるかわからないんですよ!」

「いやぁ副会長が懐中電灯はわたしが責任を持つっていってたから仕方ないんじゃないんですか?」

 副生徒会長が振り返ろうとしたのを力を込めて抑えて、

「だから、喧嘩しないで先にいこう?」

「はぁ……わかりましたよ」

 そして私たちはまた迷宮を彷徨う。

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