東京ミステリサークル

バブみ道日丿宮組

お題:東京悲劇 制限時間:15分

東京ミステリサークル

 東京都に大地震がきたのは、2年前。

 それは歴史上聞いたこともないマグニチュード14という地割れを引き起こした。

 今の東京といえば……ただのホール(大きな穴)がある地域。

 なぜ局地的限定的に東京都だけが揺れたのかについては研究者が被害を東京に留めるように封印したとか、宇宙人のミステリーサークルが東京にできるようにやったなんて噂がたくさん。

「……」

 ただわかるのは、今は近づくことも許されない土地となったこと。

「ヒデェものだな。俺たちも旅行とかいって学校サボってなきゃあの中で死んでたってな」

「……そうだな」

 悪友の言葉は最もだ。

 失った人にいたわる気持ちはあるにはあるが、お互い口にしない。好きだった人、家族を失った仲だ。これ以上失いたくはない。

「なんにしても、あの黒いモヤはなんだろうな? 地球の真ん中ってマグマがあるんだろ? そこらへんまで砕けたって話なのに漏れてもこないし」

「神奈川県の一番高くて、東京に近い高層マンションから見えるってのもおかしいな話ってか」

 あぁと悪友はマンションのリビングで、双眼鏡を覗き込み辺りを探る。

「お前が旅行にいこうってこのマンションに連れてきたのと何か因果でもあるんかな」

 そうでもなきゃ、こんなリッチな場所で悠々と暮らし傍観者としてはいられない。地上に目を向ければ、様々な機関や、人が蠢いてる。

 今でも逃げ遅れた人が近くにいないかを捜索、けが人を輸送が発生してる。特に東京に近い場所は渋滞に次ぐ渋滞。我先に逃げようとするもの、支援しようとするもの、紛れて犯罪をするもの。

 たくさんの悲劇と喜劇が混ざり合ってる。

「確かにお前が言うとおり、あらかじめあの地震が起きることを予言してるようなタイミングだったな」

 悪友が双眼鏡で覗き込むのを止め、こちらを見た。

「俺もたまたま爺から誕生日プレゼントだってここの住所と鍵をもらったんだよね」

「誕生日ってお前まだまだ先じゃないか。僕のほうが近いくらいだぞ?」

「そうなんだよなー。笑っちまうよ。ボケたのかって言ったんだが、これが誕生日プレゼントになるからお前は何かを連れてくじゃって、睨まれちまった」

 苦笑い。

 こんなことになるなら、本当だったらそのお爺ちゃんを悪友は連れてきたかったに違いない。昔から色々あのお爺ちゃんに教わったことはたくさんあるし、勉強も見てもらった。

 ほんと良い人だった……。

「俺たちにできるのはたぶん傍観者であり続けることだ」

 そういって悪友は一台のカメラに目を向ける。

「そうだな。俺たちがネットで公開し続ける限り、誰かが何かを発見してくれることを期待するしかない。」

 それが生き残ってしまったという僕らなりのケジメの仕方。

 もちろん、僕たちがあの地震を起こしたわけじゃない。

 けれど、やらなきゃ壊れそうだった。

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東京ミステリサークル バブみ道日丿宮組 @hinomiyariri

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