αからβへ

バブみ道日丿宮組

お題:3月の外資系企業 制限時間:15分

αからβへ

 やられたと思った頃には、もう外資系企業の一員だった。外資系というか、外宇宙系というべきかもしれない。

 だが、俺はただの社員。文句はいえない。

 上司は毎日のように愚痴をこぼし、抗議し続けてる。まったく無駄なことだと思う。言葉が通じてるだけましだが、相手が悪い。

 世の中は金。それが全てだ。

 はじまりはそう……今年1月に入ってからだ。

 ゆっくりとかだが知らない人がいるということに実感を置くべきだった。それだけで変化を知ることはできただろう。

 人ではないものが入り込んでるという事実を知らない連中は顔を変えず、ただ仕事に生きてる。

 誰にでも転職の機会はあったかもしれない。

 しかし2月にはそのルールは破壊された。

 国の変化、つまりは国が変わった。

 この国はもう俺の知ってる国ではなくなった。

 戦争が起こったわけでもないし、テロが起こったわけでもない。

 だが、国が変わった。

 もうとまらない。止めるやり方もわからない。

 潜伏者が誰だったのか、国の首謀者が入れ替わったのか。世界を統べるのが誰に変わったのか。

 そういうことを考えるのはやめた。

 無駄に無駄を重ねることだ。

 だから、近寄ってきたものに言葉を告げる。

「ーー次は何を?」

 国と会社が変わり、やらされてる仕事はハッキングだ。一流企業だった場所が犯罪を主に仕事とする場所に変わった。

 笑えない冗談だ。

「次は、この国のエンジン部分をもらう」

「わかりました。で、いつまでに?」

 振り返ると、人間のような格好をした何かは、

「大丈夫、時間はある。いつでもいい」

 肩を冷たい手で触ってきた。

「ここ以外もやってもらってる。はやいかおそいかで給料は変わらない。仕事もだ」

 満面の笑みというのか。表情が読めないがおそらく笑ってるのだろう。

 不気味だ。

「はい、わかりました」

 音もなくそのものは去った。

 色が白いなにものかは。

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