第435話 話さないでと、沈黙と、今は秘密

 数字を数えたり計算している時に、でたらめな数字を耳元で言われると混乱する。

 子供がやる悪戯だが、時蕎麦という落語の演目もある。

 この悪戯が魔法学園の試験妨害で流行ったのだ。


 これはキレるよね。

 で魔法学園から依頼が来た。

 サイレントの魔道具を作ってほしいと。


 これは意外に難しい。

 無音というのは音をなくさないといけないからだ。

 どういう原理でというと空気の振動を止める。

 真空なら容易いが、生徒を真空で包むわけにはいかない。


 空気振動を念動で消滅させるしかないか。


#include <stdio.h>

#include <conio.h>


extern MAGIC *eliminate_air_vibrations(void);

extern int mclose(MAGIC *mp);


void main(void)

{

 MAGIC *mp; /*魔法構造体*/

 while(1){ /*無限ループ*/

  mp=eliminate_air_vibrations(); /*空気の振動を止める*/

  mclose(mp); /*魔法終わり*/

  if(kbhit()) break; /*何か入力されたら止める*/

 }

}


 こんな感じで魔法はできて、魔道具にして収めた。

 この魔道具を手に入れたいと色々な組織が動き始めた。


 魔法の詠唱を阻止とかはできないんだけどね。

 魔法は声が消されても発動する。

 おそらくテレパーシーみたいな力で魔力を動かすからだ。

 言ったという意識があれば問題ない。


 ええと、用途としては拉致や暗殺だ。

 声が出せないと、格段に仕事がやり易い。

 困ったな。

 このままだといずれ横流ししたりして、この魔道具が悪用される。


 耳栓にするか。

 これなら着けている人だけだ。


extern MAGIC *earplug(void);

extern int mclose(MAGIC *mp);


void main(void)

{

 MAGIC *mp; /*魔法構造体*/

 mp=earplug(); /*耳栓*/

 while(1){ /*無限ループ*/

  if(kbhit()) break; /*何か入力されたら止める*/

 }

 mclose(mp); /*魔法終わり*/

}


 耳栓の魔道具を納入した。

 試験を受ける生徒にも好評だ。

 無音だと集中できるらしい。

 音を消す魔道具は、王家の影に売りつけた。


 これで良い。

 そう思ったランシェはある銅像の中に、この魔道具を設置。

 無音空間を作った。

 この空間の中で願いを唱えると叶うらしい。


 デートスポットにもなった。


「さあ、あの空間で誓いの言葉を」


 4人の婚約者に連れてこられた。

 恥ずかしいこともこの中では堂々と言えるのだ。


「算数やったか。耳の後ろも洗えよ。剣みがけよ。寝冷えするなよ」


 そう4人に言ってやった。

 無音空間から出て、レクティが何か納得いかなそう。


「わたくし、耳……」


 ネタばらしをしそうになるレクティの口を塞いだ。

 ウインクするとレクティは頷いた。

 レクティは読唇術をマスターしてたか。


 ちょっとそれ言わないで。

 マイラは算数が苦手だし、レクティは耳の後ろは洗っているが、たまにお付きの者が忘れているのを知っている。

 セレンは剣を磨くのを時たまさぼる。

 リニアは布団掛けないで寝てることがある。


 それはいまレクティに言われたらちょっと不味い。

 マイラがニヤニヤ笑っている。


「貸しひとつだから。別に算数ができなくても死にはしない」


 くっ、マイラもか。

 流れを読み取る能力は厄介だな。

 きっと、筋肉の動きだな。


 セレンとリニアはきょとんとしてる。


「分かった貸しだ」

「でないと何を喋ったか……」


 マイラの口を塞いだ。

 だからそれは話さないで。

 無音空間がこんなに危険だとは。

 分かっていたらもっと無難な事を言った。

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