第432話 住宅の内見と、幽霊と、ウイルス

 住宅を移ることになった。

 そこで新しい家を見に行った。

 だが、入ったとたん悪寒が。

 この世界にアンデッドはいないはず。

 いや、厳密に言うと魂はある。

 あると言ったがこの世界はゲームの世界。

 魂のファイルがあるだけだ。


 俺は4人妻がいるのだが、そのうちのセレンがハエでも追い払うように手をパタパタさせた。

 何も見えないんだが。

 妻のひとりのマイラが不思議がることなくニヤニヤと眺めている。


「何か見えるのか」

「まあね。不自然な流れが見える。魔力でもないし、魔法で起きたエネルギーでもない。流れとしか言いようがないかな」

「攻撃であることには変わりない。みんな何者かの攻撃だ」

「あっ、蜘蛛女の中に入っちゃった」


 マイラが蜘蛛女と呼ぶ女性は、俺の妻の一人でレクティという。


「レクティ」


 レクティは身をブルって振るわせると、にっこりと笑った。


「幽霊は毒が嫌いみたいですね。毒のことを思い浮かべたら出て行きましたわ」


 マイラの様子がおかしい。

 右手を左手で抑えている。


 そして、指で頭の一点を突いた。


「ちっ、逃がした。あの糞幽霊の流れを乱してやったけど浅かった。あ、リニアに入った」


 マイラの特殊能力は流れを把握すること。

 本人も知らない弱点などが分かったりする。

 リニアも妻の一人だ。


「よしよし、良い子。怖くないわよ」

「リニア、幽霊が中にいるのか?」

「ええ、中で大人しくしてるわ」


 リニアの特殊能力は共生。

 体の中に色々なモンスターを飼っている。

 幽霊も飼えるのだな。


「そこっ」


 マイラが壁に短剣を突き立てた。

 壁がボロボロと剥がれて骸骨が見えた。

 やっぱり幽霊か。

 壁の中に死体を埋め込むとは古典的だな。


 でも幽霊はいないはずだ。

 これはなんなのか。


 この部屋のファイル状況を調べる。


import subprocess # 機能を追加

res = subprocess.run("dir *.py",stdout=subprocess.PIPE,shell=True,encoding="shift-jis") # プログラムソースリストの情報を取得

print(res.stdout) # 情報を表示


 このプログラムというか魔法で出来る。

 調べてみると骸骨は『.exe』ファイルだった。

 どうやらウイルスらしい。

 魂ファイルに取り憑く仕組みのようだ。


 ウイルスを停止させる。

 骸骨が俺に掴みかかってきて、骸骨の口が開いて、俺に迫った。

 いや崩れそうになったのがそう見えたかは分からない。

 マイラが俺に噛みつく骸骨を短剣で砕いた。

 腐った顔面の男の顔が一瞬出て、骨は塵になった。

 幽霊だったのかウイルスだったのかは分からない。


 こんな部屋には住みたくない。

 壁の修繕費を払っておさらばしよう。

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