第430話 秘密と、世界の構造と、抗って生きる

 俺はタイト。

 俗にいう魔法使いだ。

 俺には秘密がある。

 それは異世界転生したってことだ。

 異世界転生は4人いる婚約者たちにも秘密だ。


 だが、最近この世界は異世界じゃないんじゃないかと思われて来た。

 まず、魔法が、どんな言葉でも発動できることだ。


 【火球】でも、【火球飛べ】でも、【魔力を用いて火球を生じさせ敵に向かって飛ばせ】でも良い。

 世界のシステムがこうなっているからという理由で確かに納得は出来るんだけど。


 AIが文章を解析して、魔法をやっているという疑いが拭えない。


 魔法はプログラム言語でもできる。

 プログラム言語だと効率がいい。


 これも疑いのひとつだ。

 こういう魔法というかプログラムがある。


import subprocess # 機能を追加

res = subprocess.run("dir *.py",stdout=subprocess.PIPE,shell=True,encoding="shift-jis") # プログラムソースリストの情報を取得

print(res.stdout) # 情報を表示


 『py』ファイルをプログラムのソースリストを表示するプログラムだ。

 これを実行したら。


C:\Users\カニキクカ のディレクトリ




2133/10/17 16:00        163 1行エディタ.py

2133/10/17 16:05        146 種火.py

2033/10/17 16:13        201 火球.py

2133/10/17 17:30        298 火球×10.py

2133/10/17 17:22        220 火球ダブル.py

2133/10/18 10:45        219 水生成.py

2133/10/18 10:58        67 魔道具化.py

2133/10/18 11:16        196 魔道具化×100.py

2133/10/25 11:34       6,947 エディタ.py

2133/10/25 12:01        253 火球22連弾.py

2133/10/25 13:09        535 無限火球.py

2133/10/26 10:05        578 名前隠蔽.py

2133/10/26 10:33        266 魔力無限回復.py

2133/10/26 11:24        204 塩生成.py

2133/10/26 11:27        201 風跳躍.py

2133/10/27 10:08        554 火球100改.py

2133/10/27 10:13        558 火球1000改.py

2133/10/27 10:16        562 火球10000改.py

2133/10/27 10:37        825 火球10倍速.py

2133/10/27 11:20        546 名前鑑定.py

2133/10/27 11:39        360 無限投擲.py

2133/10/27 12:04        829 火球100倍速.py

2133/10/27 13:56        524 火球10倍速吸魔なし.py

2133/10/27 14:04        92 投擲試験.py

2133/10/27 15:32        138 ファイルリストglob.py

2133/10/27 15:35        211 ファイルリストDOS.py

      26 個のファイル       156,935 バイト

       0 個のディレクトリ 45,157,988,718,766,299,136 バイトの空き領域


 こんな感じに出て来た。

 プログラムは俺の脳内にある。

 だが俺の脳内が『C:\Users\カニキクカ』だなんて。

 『カニキクカ』は俺の神秘魔法名。

 神秘魔法名は同名がいない。

 神秘魔法名はおいといて、『C:\Users\』てなんだ。


 俺の情報が『C』ドライブにあるなんてまるっきりパソコンだ。


「深刻な顔してどうしたの?」


 婚約者の一人であるマイラが俺の顔を心配そうに見つめる。


「ここが虚構の世界。幻だったらどうする?」

「そんなこと気にしてたの。なるようにしかならないの。明日、突然、神様みたいな人が世界を全部なくしてしまうと決断しても、抗うだけよ。死ぬまで抗う。それしかないの」

「うん、そうだね」


 俺の推測が正しければ、俺は病死して、脳のデータをスキャンされた。

 そのデータを元にこの世界の俺が作られている。

 俺だけじゃなくて他の人もそうかも知れない。

 ただ、俺だけが偶然、日本の記憶が甦った。


 献体の署名にサインしてこうなったわけだが、まあいいか。

 データとして生きていても、それでも生きていることに変わりない。

 仮想空間ではなくて神がゲームを元に作った世界でも、それはそれで構わない。

 マイラのいうように抗って生きるのに、世界の構造は関係ない。

 何があっても、抗って生きる、いい言葉だ。

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