第423話 薬草採取と、鑑定魔法と、味の改良

 今日は薬草採取の依頼。


「これか」

「ちょっと待って」


 リニアがそれを少し齧る。


「弱い毒みたいね。でも毒も薬って言うから」

「図鑑貸してみて下さいませ」


 レクティが図鑑を確認する。


「どう」

「どうやら、お目当てのカイユ草よりニガカイユ草の方が似ている気がしますわ」


 薬草が分からん。

 図鑑は買ったが似たような草があるから侮れない。


「鑑定魔法を使ったらどう」


 セレンがそう言った。

 よしやってみるか。


「【われは内包する、魔法規則。かの者は目の前にある草。かの者の名前をレベル1鑑定魔法に受け渡し、名称を受け取れ。それを示したまえ。名称鑑定】」


――――――――――――――――――――――――

ニガカイユ草

――――――――――――――――――――――――


 うん、レベル1の鑑定でも、名前は分かる。


 これをやりまくるなら。


print("【われは内包する、魔法規則。かの者は目の前にある草。かの者の名前をレベル1鑑定魔法に受け渡し、名称を受け取れ。それを示したまえ。名称鑑定】")

print("【われは内包する、魔法規則。かの者はレクティ。かの者の名前をレベル1魔力譲渡魔法に受け渡し、魔法情報を受け取れ。魔法情報を元に俺に魔力を移せ。魔力譲渡魔法】")


 こうしてプログラムしとけば詠唱が要らない。


「その魔法ちょっと待ったぁ。レクティからでなくて私達からも魔力供給させて」


 マイラらしいな。


「うん変更点は少ないから、順番に手を繋ごう」


 草を鑑定しまくって薬草を摘む。


 鑑定魔法ありきだが、薬草採取は楽勝だな。


「依頼品の鑑定をお願いする」

「【われは内包する、魔法規則。かの者は目の前にある草束。かの者をレベル20鑑定魔法に受け渡し、各名称を受け取れ。それを示したまえ。名称鑑定】」


 レベルが上がると一度に鑑定できるんだな。

 なるほどね。


「数が多いようですがどうされます。ギルドで買い取るとなると依頼の金額より下がりますが」

「持って帰るよ」


 依頼の数より採り過ぎたので、カリンに持って行く。


「ありがと。来たついでに新しい味のポーションを飲んでってよ」

「頂きます。みんなも飲め。ぐふっ」

「私はパス」

「わたくしも」

「わたしも」

「同じく」


 くっ、酷い。

 俺だけが実験台か。


 それにしても、酷い味だ。

 くそ不味い青汁に無理やり果物の味を加えたかのようだ。

 変な甘さが口の中に何時までも残る。

 これなら甘さはない方が良い。


「どう?」

「正直言って、完成はまだまだ遥か先だな」

「やっぱり」


 がっくりきた様子のカリン。


「でも薬効を変えないで、甘みを付け加えることが出来たんだろ。次は足し算じゃなくて引き算してみたら。不味い味を抜くんだよ」

「難しい注文ね。不味い味は大体、薬効成分なの」


 魔法で味を変えたらどうだ。


「【味変せよ】」


 上手くいった感触がない。

 味変に関する魔法スキルが無いようだ。

 スキル鑑定してみたが、味変魔法なんてスキルは生えてない。


「ぷぷっ、そんなので出来たらみんなやっているわ」


 カリンに笑われた。


「【不味い味を抜け】。ぺろっ、ぺっぺっ。駄目だ」

「タイトが失敗するなんて珍しい」


 マイラがちょっと驚いている。


「あら、どんな人でも失敗は致しますわ。飽くなき探求が偉業をもたらすのです」


 レクティは俺の努力の面も知っていると言いたげだな。


「ポーションは魔法とは別部門だから、こんなの失敗のうちには入らない」


 リニアの言うことももっともだ。

 だがちょっと悔しい。


「でもきっとタイトならそのうち」


 セレンは俺が解決すると思っているようだ。



「くくっ、負けず嫌いなのね」


 またもカリンに笑われた。


「【薬効成分ごとに分離せよ】。この分離したので最小限の薬効成分だけを薬にしたら」

「舐めてみれば分かるわ」

「ぺろっ、くっ激マズ。不味さが酷くなった」

「他の成分が味を和らげたりしているのよ」


「薬には調和というものがあるのよね。無駄だと思っている成分が意外にないと困る物だったりする」


 セレンが医者らしいひと言。


「毒もですわ」

「チンピラも組んでないと力を発揮しない奴がいる」

「調和ね。難しいかもね」


 くそ、挑戦状を叩きつけられた気分だ。

 この事は覚えておく。

 いつかリベンジしてやるぞ。


 合成スキルとかないかな。

 もっとも合成すると混ぜたのと変わらないかもな。

 上手くはいかないものだ。

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