第422話 計算と、魔道具と、4人の意向
さて、さらわれてきた子供達を返さないといけない。
この間の人さらい組織襲撃で更に人数が増えている。
もちろん俺に責任があるわけではない。
だが、助け出したのに野垂れ死にしろとは言えない。
で、魔道具だ。
それぐらいしか今は金策が思いつかない。
冒険者ギルドで仕事して分かったのだが、計算ができない人が多い。
服屋での客とのやりとりで、金額を間違えていることが度々あった。
店側が間違えていたのではなく客が渡す金が少なかったことが多い。
とくに二着以上を買った人が間違えている。
それで思いついたのが計算の魔道具。
sum=0 # sumに合計を入れる。
s=input() # 数を入力する。
while s!="" : # 空が入力されたら終わり。
sum+=int(s) # 合計に入力された数を足す。
s=input() # 数を入力する。
print("合計は",sum) # ループが終わったので結果を表示する。
まずは足し算だということで、こんなのを作ってみた。
数を入力して足し算するだけ。
だが日常で使うならこれで良い。
品物の合計を出す計算が一番多いだろうからだ。
「これはいいな。計算間違いもこれで減る。これは売れるぞ」
持って行った魔道具を使ってみてのヒバの感想がこれだった。
「何か改善点は?」
「引き算もあったら便利だな」
「それならこのままでもできるよ。数を入力するときに引き算の場合だけ『-』を付ければ良い」
「おお、引き算と足し算が混在できる。凄いな。まさに天才の発明だ。なら掛け算と割り算も簡単に作れるよな」
「1回だけのやつなら簡単にできる。いま作ろうか」
「頼む」
a = int(input("掛けられる数:"))
b = int(input("掛ける数:"))
print("答えは",a*b)
掛け算をこんなだ。
a = int(input("割られる数:"))
b = int(input("割る数:"))
print("答えは",a/b)
割り算はこんな感じだな。
「ひとつ銀貨1枚出そう」
「量産しないとな」
「ゴブリンの魔石なら腐るほどある。種火の魔道具は必需品だからな」
店にあったゴブリンの魔石は全て計算の魔道具になった。
金は売れたら順次入って来る。
あと少しだな。
最初に助けた4人に会いに行った。
アリウムは市場で働いてた。
売り子と作物運びが主な仕事らしい。
「俺はまだ帰らない。ただ無事を知らせる手紙は書きたいな。でも文字が書けないんだ」
「それなら俺が代筆するよ」
手紙をしたため、冒険者ギルドに託す。
服屋で働いていたエリカも話を聞いたら帰らないらしい。
「私も手紙をお願い。それと必ず返すから、少し貸して。勉強のために服を仕立てたいの。だけど私に注文とてくれるお客さんはいないし、お店の材料は勝手に使えない。だから自分で買わないと」
「そういうことなら、俺達の服を作ってよ」
「ぜひやらせて」
エリカに服を作ってもらうことになった。
カリンはポーション工房で働いてた。
やはり帰らないらしい。
始めた修行を途中で放り出したくないと言った。
「村の師匠のお婆さんは良い人だけど、普通の村の薬師。こことは違う。ここなら村で学べないことも学べるの」
気持ちは分かる。
こういう分野は往々にして、都会の方が進んでるからな。
「分かったよ」
「いま取り組んでる。ポーションの味改良の目途がついたら、村へ帰るわ」
カリンも手紙を出して終わった。
コキアは商人の家で小間使いとして働いてた。
やはり帰らないようだ。
「仕事楽しい?」
俺は聞いてみた。
「ええ、お料理がどこも美味しくて、給料日には甘味も食べられる。村じゃ年に1回あれば良い方。それに新しいこともたくさん覚えられたわ」
俺はコキアにゲームと計算の魔道具を上げた。
宣伝のつもりだ。
商人はこういうのが好きだろう。
目に留まれば、お得意様になってくれるかも知れない。
「どう?」
「計算ができないから凄く助かる。ゲーム楽しいわね。文字も楽しく覚えられたら」
「何か考えてみるよ」
文字を楽しく覚えるのか。
何が良いかな。
交換日記とかが良いかもな。
でもただ交換日記したんじゃつまらない。
簡単な暗号なんかどうだろう。
後で考えてみよう。
それにしても、若者は都会に憧れる。
どこの世界も一緒だ。
仕事が順調で乗って来て、面白くて仕方ないという感じかな。
まあそれも良い。
組織を壊滅した時に助けた子供達も大半は街で仕事を探すという。
好きにするさ。
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