第421話 子守りと、挑戦と、眠りの魔法

 初依頼をFランクの掲示板から探す。

 時間的には討伐は無理だな。

 薬草採取もちょっと暗くなるかも。

 となると街で出来る生活依頼だな。


 マイラがある依頼を熱心に見てる。

 子守りの依頼だ。

 もしかして、予行練習したいとか考えてる。

 まあいいか。


 俺はその依頼を手に取って剥がした。

 受付で受注手続きを済ませ、依頼人の所に向かって歩き始めた。


 依頼人の住んでいる所は、服屋だった。

 店と住居が一緒になっているらしい。

 店の外にも赤ん坊の泣き声が聞こえてきた。


 扉を開けるとチリンチリンとドアベルが音を立てた。


「いらっしゃい」


 げっそりした若い男が迎えてくれた。

 寝れてないらしい。


「えーと、子守りの依頼で来ました」

「助かった。これで一息つける」


 そう言って男は心底ほっとしたような様子を見せた。


「赤ちゃんは2階?」

「ああそうだ。妻がいま面倒を見てる。早く行ってくれ」


 2階に上がる。

 ノックして返事を待ってから部屋に入った。

 やはりげっそりとして若い女が赤ん坊をあやしている。


「子守りに来ました」

「助かった。もう寝られなくて限界」


「おーよしよし」


 マイラが赤ん坊を抱いてあやす。


「ぎゃあぎゃあ!」


 赤ん坊は泣き止まない。


「マイラさんでは駄目なようですね」

「じゃあレクティやってよ」

「子守りなど乳母の仕事です」


 レクティはパスだそうだ。


「じゃあ私が」


 セレンが赤ん坊を抱く。


「ぎゃあぎゃあ!」


 セレンも駄目なようだ。


「みんな駄目ね。孤児院で赤ん坊の世話をした私に任せなさい」


 真打とばかりにリニアが赤ん坊を受け取る。


「おー、よしよし」

「ぎゃあぎゃあ!」


 どうやら、全員駄目なようだ。

 こんなの魔法で眠らせればいいだろう。


「【眠れ】」


 一瞬赤ん坊が泣き止んだ。

 よしよし、効果はあるようだ。


「ぎゃあぎゃあ!」


 赤ん坊がまた泣き始める。

 よしプログラム組むぞ。


import datetime

date = datetime.datetime.now()


while date.hou r== 14:

  print("【われは内包する、魔法規則。かの者は目の前にいる赤ん坊。かの者が眠っていなければ、レベル1睡眠魔法を起動して、魔法情報を受け取れ。魔法情報にあるものでかの者を眠らせろ。睡眠】")

  date = datetime.datetime.now()


 いま14時だから、15時になるまで睡眠魔法を掛け続ける。


 赤ん坊を眠らせることに成功した。


「任せても平気みたいね。お乳の時間まで眠らせてもらうわ。頼んだわよ」


 お母さんが部屋から出て行った。

 赤ん坊はすやすや眠ってる。

 リニアはゆっくりと赤ん坊をベビーベッドに置いた。


「タイトが一番、お母さん力があるなんて」

「あれは違います。魔王の力は万能だということだけですわ」

「私だってモンスターが出す眠りの毒とか使えば」

「毒を使ったら不味いわ。医者として許可できません」

「そんなことしないわよ。言ってみただけ」

「どうだか」

「マイラは殺気を出していたんじゃない。いやスラム気かも」

「むきー」


「おいおい、魔法で眠らせているとはいえ、大声出すなよ」


 マイラ達はまだお母さんにはなれないな。

 子供を産んだら変わるのかな。

 きっとそうだな。


 そんな気がする。


 何回か赤ん坊を起こし、お母さんが授乳させる。

 そして、依頼は無事終わった。


while 1:

  print("【われは内包する、魔法規則。かの者は目の前にいる赤ん坊。かの者が眠っていなければ、レベル1睡眠魔法を起動して、魔法情報を受け取れ。魔法情報にあるものでかの者を眠らせろ。睡眠】")


 この魔法で魔道具を作った。

 ゴブリンの魔石は小さいので、永遠に眠り続けたりはしない。

 それに魔道具を停止させれば、赤ん坊は起きる。


「いやぁ、助かったよ」

「睡眠の魔道具を作ったから。使ってみて」

「ありがたく使わせてもらうよ。魔道具の分は悪いから、古着を貰ってくれ」

「じゃあ遠慮なく」


 睡眠の魔道具は売れるに違いない。

 魔道具屋のヒバに売り込んだら、レベル1の睡眠魔法では赤ん坊しか掛からないだろうから、逆にそれが良いらしい。

 犯罪に利用されるのも考えないといけないからな。

 もっとも大人なら意思が強いから、レベルが低くてもレジストするらしいが。

 睡眠魔法無双も難しいと分かった。

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