第420話 冒険者登録と、近代魔法と、裏事情

 全員がレベル10を超えて、しかも大銀貨5枚もクリアしたので、冒険者登録することにした。

 冒険者ギルドは朝の混雑を終えたのだろうかなり閑散としてた。


「登録をお願い」

「おい、小僧。そんな金があるなら俺に寄越せ」


 そう言われたので振り返ると、前にも絡んで来たチンピラ冒険者が立っていた。

 ええと名前はたしかイクリだったな。


「何でそんな事をしないといけない?」

「登録に来たってことは、ほとんど冒険者だ。冒険者はこれが物を言う」


 そう言ってイクリは力こぶを作った。

 俺はマイラに目で動くなと伝えた。


「俺は挑まれているらしいな」

「おうよ。依頼人じゃなきゃ、他の冒険者は助けに入らない。前みたいな邪魔はないんだよ。ぎゃはは」

「【Pythonパイソン スタンガン.py】」


 俺は電撃を飛ばした。

 電撃魔法のレベルも上がっているので、威力も上がっている。


 イクリは電撃を浴びてビクリとのけ反って倒れた。


「やっぱりこうなったか」


 前に助けてくれた人が来てそう言った。


「助けてくれるつもりだったの?」

「まあな」

「何で?」

「俺はスラムの出で顔役からお前達の話を聞いた。そういうわけだ」

「俺はタイトよろしく」

「ニッケイだ。冒険者登録したら色々と教えてやろう」

「うん、よろしく」


 受付嬢に向き合うと、用紙を出された。

 こういう所も一緒だな。

 用紙を埋めて、大銀貨1枚を払う。


「レベルを鑑定させてもらいます。【われは内包する、魔法規則。かの者は目の前にいる者。かの者の名前をレベル34鑑定魔法に受け渡し、レベル数を受け取れ。それを示したまえ。レベル鑑定】。レベル12ですね」


 おお、これが近代魔法ってやつか。

 規則性は分かる。

 プログラムチックだからな。

 こうすると効率が良くなるのか。

 こんなのはひとつ分かればこっちのもの、応用なら自信がある。



「ギルドカードです。冒険者ギルドはあなた達を歓迎します」


 そう言われて、冒険者登録は問題なく終わった。

 カードにはFランクの記載がある。


 酒場に行くとニッケイが俺を見つけて手を上げた。

 その隣のテーブルに着く。


 ニッケイが俺達のテーブルに移ってきた。


「無事終わったようだな」

「まあね」

「よし、レッスンというか裏事情を教えてやる。他の領地の冒険者ギルドは登録料を取らない」

「ぼったくりか」

「いいやこの領地だけが異常なんだ」

「何で?」

「ここのギルドマスターが領主に上納金を渡すためだ。しばらく冒険者をやると、講習に出るように勧められる。冒険者ランクは早く上げたいなら、講習をたくさん受けると良い。ただ講習の中身はほとんどないがな。値段も大銀貨1枚からだ」

「中身がないなら出ないよ」

「ギルドマスターに睨まれるぞ」


 なんか悪徳業者みたいだな。


「ギルドマスターに睨まれても構わない」

「そうか。俺のパーティメンバーを紹介しておく。女性の魔法使いがツルナだ。弓をもったのがチャバイ。腰にナイフをたくさんぶら下げているのがバッカツだ」


 リーダーであろうニッケイは剣士だ。

 ハンサムというか精悍で野性的な顔つきだ。


 ツルナは素手だ。

 但し、魔石で作った魔道具を腕輪や首輪にして身に着けている。

 おそらく攻撃用の魔道具だろう。


 チャバイは丸顔で人が良さそうだ。

 ただ弓を引いているだけあって体の厚みが凄い。

 きっと鍛えているんだろうな。


 バッカツはガリガリのヒョロヒョロだ。

 貧相な顔つき。

 ナイフ使いなのだろう。

 素早さに特化しているのかも知れない。


「何かまた裏事情を教えてくれ」

「金次第でな。俺達も食っていかなきゃならない。悪く思うなよ」

「もちろん」


 ニッケイが俺達のテーブルから離れた。

 何を話しているのか聞き耳を立てる。

 どうやら、次の遠征の計画らしい。


 話の内容からすると、中堅冒険者のようだ。

 おそらくCランクぐらいだろう。

 聞き耳をやめて、俺は近代魔法のことを考え始めた。


【われは内包する、魔法規則。かの者は目の前にいる者。レベル8鑑定魔法を起動して、魔法情報を受け取れ。魔法情報にあるものをかの者に飛ばせ。電撃】


 こんな感じかな。

 プログラムを組み合わせれば、とりあえず詠唱の手間は必要ないな。

 魔法の早打ちなら誰にも負けないだろう。

 ループさせて何回も撃てば、威力も上がるに違いない。


 色々とプログラムを組まないと。

 それが俺の生命線なような気がする。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る